スタートアップであっぷあっぷブログ

元研究者のスタートアップ経営者がスタートアップでの経験やキャリアについて発信するブログ。雰囲気ゴリラ似。

記事「東芝、幹部候補をスタートアップに出向」:スタートアップから見るとこう思う

2021年1月4日の日経に「東芝、幹部候補をスタートアップに出向」という記事が掲載されました。世の中にこんな制度があることを私自身は知らなかったのでとても興味深く記事を読みました。どうやら1年間スタートアップに社員を出向させる制度らしい。

 

www.nikkei.com

 

私達のベンチャー企業(スタートアップ)で大企業から人を1年間だけ受け入れるとしたら私達が感じるであろうことを書いてみたい。

 

まず第一に優秀な人材が来てくれるなら嬉しい!しかもタダで!これはすごい。東芝さん、私達の会社も候補にいれてくれないかなぁ。。。

 

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私達の会社では人材採用で苦労しています。信用も知名度もないから無理もありません。特に私達の会社はステルスモード(大っぴらに宣伝しない状態)なので何をしているのかほぼ公表していません。そんな会社に人に来てもらうことは本当に難しい!

 

Indeedで社員募集をかけたことをありますが、1件しか応募がありませんでした。その1件も残念ながらマッチングせず結局採用はできませんでした。普通に募集したら若い大企業出身者なんて来てくれる可能性はほぼありません(涙)。

 

結局私の過去の職場での先輩や後輩に来てもらってようやく成り立ってる状態になっています。(近々スタートアップでの採用に関する記事を書こうと思っています。)

 

私の会社に来てもらっている人達を見ても、大企業の採用プロセスを通っている人の基本的な能力はとても高いです!大企業の人事ってすごいなぁと心底思う。応募者も優秀な人が揃っているのでしょうね、きっと。

 

しかも1年間の期間限定であってもスタートアップとしてはものすごく多くの事が起きるので、決して短期間ではありません。1年前の事はものすごく遠い昔のことのように感じます。そもそも社員も離職する可能性があるので1年だから短すぎるということはないと感じています。

 

会社にフィットしない人が出向してくる可能性もありますが、スタートアップ側で給料を払うのでなければ全く問題ありません。冷たい言い方になりますが、その場合は会社で寝ていてもらっても構わないくらいです。マイナスになる事をしてくれなければそれで大丈夫。

 

唯一の心配事は大企業側への秘密情報の流出でしょうか。いくつか他社への業務委託や共同開発をしていたりするので、そういった情報が流出してしまうのが困ります。

 

 

一方で大企業でも勤めていた経験から、東芝(大企業)側からみるとこの制度のメリットと必要な対策はこのようになるのではないかと思います。

 

メリット

  • 出向者に様々なリアルな経験を超高速に積ませることができる
  • 出向者に経営に近い業務を経験させられ経営の適性を見ることができる
  • 出向者に出身企業を客観的に眺める機会を提供できる
  • 出向者にスタートアップの行動原理を理解させることができる

 

必要な対策

  • 出向終了後の適切な業務設定
  • 適切なインセンティブ設計や評価項目設定
  • 定期的な状況確認

 

対策に関して補足すると、出向して本人が成長しても出向元に戻って以前と同じ業務を続けると物足りなさを感じて離職するようになるから、成長を見越した業務や責務を提供しないといけないと思います。これは海外駐在経験者の離職率が上がることと同じ構造を持っています。

 

私も海外駐在経験があるので、身をもって感じます。出向元での業務であったり、裁量の少なさが物足りなくなるんですよね~~。しかも出向先でどのような経験をしてきたのか元の会社の人からは見えないので、出向中の「成果」は出向元ではゼロカウントにされているんですよね...。「出向先で成果もあげたし成長もしたぞ!」と本人は思っているのに周りの人達がそのようには思っていないのでギャップが生じて本人は居心地の悪さを感じます。

 

また適切なインセンティブ設計や評価項目の設定も重要です。スタートアップの成功と本人の評価がリンクしていないと、スタートアップでの業務に対して本気度が上がらない。正直言ってスタートアップ(特に経営層)の環境は過酷で、大企業の給料制度では過酷さに見合わないです。一般従業員という立場であれば別だけれど、東芝(大企業)が期待するのは恐らく経営層に近い業務経験ではないだろうか。そうなるとインセンティブ設計が難しくなります。まあ出向する本人の特性にもよりますが。

 

またスタートアップも千差万別でブラック企業も存在していると思います。このような環境で心を病んでしまう社員も出てくるのではないでしょうか。なんだかんだ言って大企業は社員を守る制度や文化が定着していますからね。スタートアップは余裕が少ないので、そういう制度や文化の醸成は後回しにしがちです。なので出向元の会社としては、定期的に出向者のフォローアップが必要だと思う。これも海外駐在員の派遣と同じような考えです。

 

いずれにしてもこんな制度があるなんて面白いなと思いました。僕が大企業からの出向者だったらスタートアップが面白くなって大企業を辞めるだろうな~。「なんだ、スタートアップ楽しいじゃん!生活していけるじゃん!」って気づくと思います。

 

東芝、チャレンジャーだなぁ。優秀で挑戦的マインドを持った人を育てたいのだろうが、そういう人達を選抜して出向させたら会社を辞めていくよね、きっと。出向者本人はハッピーに、東芝は残念な事になるかも。でもやってみないことには分からないからまずはやってみることは大切!展開を見守りたいと思います。

 

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なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 5「社内ルールや行事が必要最小限だから」

 こんにちはー。

 

今日はなぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズ 5回目「社内ルールや行事が必要最小限だから」についてお話をしたいと思います。このシリーズの最終回になります。

 

これまでのブログに記載した内容を再掲します。 

  1. 開発が遅れると会社が潰れるから
  2. 小さな失敗が許容されるから
  3. 意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから
  4. 専門性の高い他社に業務を委託するから
  5. 社内ルールや行事が必要最小限だから 

 

1-4の内容はこちらに記載しています。 

  1. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1 - スタートアップであっぷあっぷブログ
  2. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 2 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  3. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 3 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  4. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 4 - スタートアップであっぷあっぷブログ

 

5. 社内ルールや行事が必要最小限だから

 

まとめ

  • 規程類がプロジェクトに最適化されている
  • 社内行事は必要に応じて追加されていく
  • 社内ルール至上主義者が登場すると悲劇

 

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ベンチャー企業では社内の規程やSOP(Standard Operating Procedures)がプロジェクトに必要最低限なものにできるため「無駄」が生じにくい状態です。私達のようなベンチャー企業では、良くも悪くも歴史が浅いので組織として業務経験の蓄積がありません(自慢!えへん)。そのため大企業と比較するとかなり緩い規程しか準備されておらず、業務上で迷った事があればその都度相談をして判断をしていけばよいし、必要であれば自分達にあったルールを作っていきます。こうすることで自分達やプロジェクト、時世にあった行動がとれるようになっています

 

これは少人数だからできることであって、多くの人達が働く大企業ではこのようにはできません。なぜなら人が多すぎて業務上で迷う事も膨大な数に上るし、業務も人も多様なので業務を事細かに規程やSOPとして定めておくことで効率的に会社全体の業務が回るようにしなくてはいけません。

 

つまり大企業では組織全体の視点で見れば、事細かに規程やSOPが決まっている方が断然効率的になるということです。ただ個別の業務に視点を移してみると、会社全体に適用される規程やSOPが業務の妨げになっている事は往々にして生じてしまうデメリットもあります。これは仕方が無いですね...。大企業には歴史があるので、膨大な経験から規程やSOPが作られていてそれはそれで貴重な財産である反面、時代や状況に合わない規程やSOPがゾンビのように生き続けていてこれが自らの足を縛っていることもあります

 

日本の大企業で働いていた時に「5S、5S!」と叫びながら机の位置や電気の点灯ルールなど細かく指導してくれる人たちがいましたが、私は「机のきれいさではなくて、規程やSOPを必要最低限にして働きやすくして欲しい」と常々思っていました。もちろんそんなことを言うと「5S警察」に逮捕されるので心の中に留めていましたが。

 

また大企業にありがちな「研修」や「交流会」といった行事も私達の会社にはほとんどありません。業務時間は業務に集中がしやすい環境になっています(イベント好きにはつまらないかも知れませんね)。これは逆に言うと、ベンチャー企業は「研修」をして社員教育をする余裕があまり無いし(必要だとは思っているんだけど。。。)、「交流会」のように社内ネットワークを広げるための行事の必要性が低いということです。

 

ベンチャー企業の場合でも一つだけ注意しないといけない点があります。ベンチャー企業に社内ルール至上主義者が登場すると悲劇が起こってしまう事があるということです。これは私達のベンチャー企業では起こっていませんが、友達が経営する別のベンチャー企業で起こったそうです(お友達の社長、怒ってたなぁ~~)。

 

そのベンチャー企業で大企業出身者を雇ってみたらその人が前職までに経験してきた大企業では当たり前のルールを一生懸命に導入をしようとしたそうです。きっとその彼としては大企業での経験を活かして貢献したいという気持ちだったのでしょうが、会社の売上を伸ばす事に注力したい時期なのに間接業務ばかりが増えてしまったそうです。友達も「間接部門は余計な仕事ばかりつくるからいらない」とカンカンでした。会社の成長に応じてバランスよく社内ルールを整備していくのがとても重要だと思います。これが難しいですけどね。

 

以上で5回にわたってなぜベンチャー企業の方が製品開発が速いのかという事について書きました!

 

大企業での開発速度が遅くなってしまう理由については特に言及していませんが、ベンチャー企業で開発速度が早くなる理由の逆の事柄が大企業で開発速度があげられない理由にあたります。いつかのタイミングで大企業でこうすれば開発速度があげられるのではないかという事については考えを書いてみたいと思います。

 

あーーー2020年以内に5回書ききった!達成感あるなーーー。よかった!

お付き合いありがとうございました。

 

【なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズ】 

  1. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1 - スタートアップであっぷあっぷブログ
  2. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 2 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  3. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 3 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  4. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 4 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  5. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 5 - スタートアップであっぷあっぷブログ

 

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なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 4「専門性の高い他社に業務を委託するから」

こんにちは~。

 

今日はなぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズの4回目「専門性の高い他社に業務を委託するから」についてお話をしたいと思います。

前々々回のブログに記載した内容をこちらにも再掲します。 

  1. 開発が遅れると会社が潰れるから
  2. 小さな失敗が許容されるから
  3. 意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから
  4. 専門性の高い他社に業務を委託するから
  5. 社内ルールや行事が必要最小限だから 

 

1-3の内容はこちらに記載しています。 

  1. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1 - スタートアップであっぷあっぷブログ
  2. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 2 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  3. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 3 - スタートアップであっぷあっぷブログ

 

4. 専門性の高い他社に業務を委託するから

 

まとめ

  • 専門性の高いプロに仕事をお願いできる
  • 選択肢が多いのでプロジェクトに合ったプロに仕事をお願いできる
  • ベンチャー企業側にはプロジェクトマネジメント能力が必要
  • ベンチャー企業側に確かな目利き力が必要

 

これまでに何度も述べてきた通りベンチャー企業ではメンバー数も資金も限られていることがほとんどではないでしょうか。私達の会社も10名程度のメンバーしかいないし、ベンチャーキャピタルから調達した資金も非常に最低限のものになっています。このような状態では、目標達成のための全ての専門性を自社内に揃えることは元々無理な状態にあります。従って必然的に目標達成のために経験のある他社に業務を委託することになります。

 

私達のような創業間もないベンチャー企業の場合、自社で全ての業務を完了できないという実態はあるものの、他社に業務を委託することの最大のメリットは専門性の高いプロに仕事をお願いできることにあります。自社内に経験やノウハウが無くても他社の知見を借りられてしまうのはとても素晴らしいことです。もちろん自社内で実施するよりも高い費用を一時的に支払うことになるが、自社内で専門家を雇い続けるよりも私達のベンチャー企業では断然良いです(プロに私達の会社を選んでもらう事がまず大変だし、採用できたとしても一つのプロジェクトしか走っていない私達の会社ではそのプロにずっと仕事をしてもらうほどのものが無いため雇用し続けるのが重荷になります)。また自社内にそのような専門性をゼロから蓄えるよりも他社の力を借りてしまった方が断然早いし質も高い場合が多くなります

 

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また高い専門性を持った人や会社は社外に複数の選択肢がある場合が多いため、私達に合った会社に仕事をお願いできる可能性が高くなります。そのような会社の中では当然リソース配分が最適化されていて、私達の会社の依頼に応えられる状況にある会社とそうでない会社とが存在します。タイミングもあります。ですので私達の会社の依頼に応えられる状況にある会社とだけ協議が進めることができるので効率が良いです。

 

私の経験上、この点は大企業でプロジェクトを進める場合とは状況が異なります。私の経験では大企業で新しいプロジェクトを進めようとする場合、そのプロジェクトを進めるために必要な業務を担当する部門にまず仕事をお願いすることになりました。大企業のマネジメントからすればこのように社内資源の有効利用を図ることは当然なプロセスです。

 

問題なのは、この大企業内の担当部門が競合他社と比較して競争力が無い場合です。このような場合でもその部門に業務を依頼しなくてはいけなくなる事がほとんどではないでしょうか。それは上司がその部門を使えと言うからかも知れませんし、人間関係がギスギスしてしまうことをさけるからかも知れません。

 

いずれにせよこうなるとなかなか業務のスピードも質も上がらなくなってしまいます。またその担当部門の競争力が高い場合でもエース級の人材に業務をお願いすることが難しかったりします。なぜならエース級人材は社内でひっぱりだこで儲けの大きな既存事業で重要な役割を果たしていることが多く、うまくいくかどうかも分からない新しいプロジェクト、つまり社内的に優先度の低いプロジェクト、にはなかなか時間を割いてもらえないからです。個人的にそのエース級人材と仲が良かったりすると仕事を受けてもらうこともできますが、いつでもそれが可能なわけではありません。

 

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一方で、これは良い事ばかりではありません。他社に業務を委託する際にベンチャー企業が持っていなくてはいけない能力が2つあります。1つはプロジェクトマネジメント能力で、もう1つは他社の目利き力です

 

プロジェクトマネジメント能力の説明については書籍や他のwebに詳しく記載されていいますが、大まかに言うとプロジェクト全体の中でどの業務を自社で、どの業務をA社で、どの業務をB社で、というように役割分担を行い、全ての業務の足並みをそろえて進めていく能力の事を指します。

 

他社に業務を委託する場合、役割分担や責任分担をきちんと行わなくては進められない大変さもあります。新しいプロジェクトで想定外の事柄が起き続けるようなプロジェクトで他社に業務を委託しつつ進めるのはそれなりに大変な事です。開発が進むにつれて当初の契約内容と変わってきてしまうことは往々にしてあります。それを前提にした契約内容にしておかなくてはいけないし、細かい費用負担について契約に書ききれないものもあります。また複数社に業務を委託していると、トラブルが発生した場合に責任の押し付け合いが始まります。ちなみに私達の会社ではこれらのいずれもよく経験しています(トホホ...)。

 

また他社に業務を委託する際に、その会社の目利き力も必要になる。その会社の実力が私達の期待するものなのかどうかということを限られた情報の中から判断していかなくてはいけません。物凄く慎重に考えて「できると思いますが、できない可能性もあります」と回答する会社もあれば、何でもかんでも「できます、できます」と軽く回答する会社もあります。各社で言葉の指す内容やレベル感がバラバラな中で手探りで探すことになります。

 

何でも「できます、できます」という会社で、蓋を開けてみたら全く実力が伴わずできなかった、という事も実際にあります!私はこのような会社に重要な業務を委託してしまって痛い目にあったことがあります。この時に経営者が判断を誤ると会社が一気に傾くという教訓をかなり痛い思いをしながら得ました。

 

このように専門性の高い他社に業務を委託することで開発速度は上げられますが、そのために自社で持っているべき能力もあるというお話でした。大企業ではこれまで自社内のリソースを使って開発を行う事が多かったと思いますが、世の中から求められる製品が大きくかつ早く移り変わっていく時代にあっては、大企業内でもプロジェクトマネジメント能力を高め、社外の力を上手に使っていくことが開発速度という観点では必要になると考えています。社外に業務を委託する場合、ノウハウの蓄積がとか、自社の秘密事項が流出するとか、費用対効果が悪い、とかいろんな意見が出るだろうが、それに対する意見もいつか別の機会に述べてみたいと思います。

 

次回は「社内ルールや行事が必要最小限だから」について書きたいと思います。


今日は以上です。ありがとうございましたー。

 

【なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズ】 

  1. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1 - スタートアップであっぷあっぷブログ
  2. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 2 - スタートアップであっぷあっぷブログ

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なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 3「意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから」

こんにちは~。

 

なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズの3回目「意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから」について今日はお話したいと思います。

 

まずは前々回のブログに記載した内容を再掲します。 

  1. 開発が遅れると会社が潰れるから
  2. 小さな失敗が許容されるから
  3. 意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから
  4. 専門性の高い他社に業務を委託するから
  5. 社内ルールや行事が必要最小限だから 

 

1, 2の内容はこちらに記載しています。 

  1. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1 - スタートアップであっぷあっぷブログ
  2. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 2 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  

3. 意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから

 

まとめ

  • ベンチャー企業は少人数だから情報の共有や社内調整がスムーズ
  • 意思決定者と社員の距離が近い

 

私の会社では総勢で10名程度なのでそもそも全員の意思疎通がとてもスムーズに行う事ができます。それなので認識の共有や社内調整も即座に終わってしまいます。これはものすごいメリットです。なぜならベンチャー企業を取り巻く環境はすぐに変化していくからです。毎週何かしら不測の事態が発生して、方向転換をしなくてはいけないほど状況は目まぐるしく変わっていきます。そんなときに即座に認識共有や社内調整ができるのは、事態に即座に対応するために非常に有利です。

 

(追記:リモートワークになったらこの意思疎通が難しくなってしまいました...)

 

また意思決定者(取締役メンバー)と社員が非常に近い関係にあるので、意思決定者から経営環境の変化を伝えやすいし、逆に現場環境の変化も意思決定者に伝えやすいことがあげられます。そもそもベンチャー企業では意思決定者自体が現場の最前線に立つことも多いので現場の環境と経営環境を一括して見渡すことが可能になります。だから意思決定者と現場がちぐはぐな対応をしてしまう事が非常に少なくて済みます。

 

ベンチャー企業での意思決定の速さについては、「1 開発が遅れると会社が潰れるから」「2 小さな失敗が許容されるから」に記載した通りだけれど、一旦社内で認識の共有や社内調整がされてしまえばすぐに意思決定を行って行動を起こす事になります。

 

1 開発が遅れると会社が潰れるから

gorilyn.hatenablog.com

 

2 小さな失敗が許容されるから

gorilyn.hatenablog.com

 

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一方大企業だと階層が多く、そもそも認識の共有に時間がかかってしまうし、認識共有ができたとしても社内調整に時間がかかり、リスクを冒せないために意思決定も遅れがちになってしまいます。私が大企業で働いていたときにもこの実感がありました。会社のサイズが大きいととにかく社内コミュニケーションコストが高いです!これは大企業に勤めた経験のある方なら同感してもらえる事では無いでしょうか。情報共有の会議、多くありません??

 

実際の例を挙げてみると、私がアメリカ企業に勤めている時にある提案を行いました。その時は直属の上司、財務、税務、法務、知財、研究開発、事業開発、マーケティング、営業、品質保証、フィールドサービスなどなど実に多くの責任者の了解を取る事になってしまいました。自分の部門を除いても少なくとも10部門の説得です!同じ説明を繰り返ししたし、同じような質問を繰り返しうけました。説明を録音しておいて説明を求められるたびにそれを流したいくらいです。このプロセスだけで4ヶ月程かかってしまいました。周囲の説得が終わるころには疲労困憊です...。これが現在の私のベンチャー企業であれば2日程度で終わってしまいます。

 

この過程の中で私がうけた質問の多くは提案プロジェクト中のどこにリスクがあって、そのリスクは最小化されているのか、という観点からでした。これは日本企業で働いていた頃と全く同様な経験でした。大企業での関連部署の関心事はリターンの最大化では無く、リスクの最小化が議論の中心でした。これは前回記載したように大企業にとって「失敗」は失うものが大きいからだと私は考えています。全く同じような経験をアメリカ企業でも日本企業でもしてきているため、アメリカ人だからとか日本人だからという問題では無く会社のサイズの問題だと感じています。

 

以上が「意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから」という項目の説明になります。大企業での社内調整っていろいろ突かれるプロセスなので勇気を与えてもらえるものではないし、本当に心身を削られるプロセスだと今でも思います。大企業にとっては大切なプロセスだと頭ではわかっていても、担当者の精神状態を本当に悪くさせるんですよね。。。なんとかならないものですかね。

 

次回は「専門性の高い他社に業務を委託するから」について述べたいと思います。何とか2020年中に最後まで書きたいです!

 

今日もありがとうございましたー。

 

【なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズ】 

  1. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1 - スタートアップであっぷあっぷブログ
  2. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 2 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  3. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 3 - スタートアップであっぷあっぷブログ

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なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 2「小さな失敗が許容されるから」

こんにちは~。

 

なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズの2回目「小さな失敗が許容されるから」ということをお話したいと思います。

 

前回のブログに記載した理由一覧はこちらになります。 

  1. 開発が遅れると会社が潰れるから
  2. 小さな失敗が許容されるから
  3. 意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから
  4. 専門性の高い他社に業務を委託するから
  5. 社内ルールや行事が必要最小限だから 

1に関するブログはこちら

 

2. 小さな失敗が許容されるから

 

まとめ

  • 新しい事をやる時には想定外の事がつきもの
  • 研究と同じで仮説と検証の繰り返し
  • ベンチャー企業では失敗が多発してしまう
  • 失敗しても何度でも素早く立ち直ることが大切
  • ベンチャー企業では失敗で失う信頼やブランドイメージが無い

 

実のところ私自身は何事が起きても失敗とは思わないタイプです。頭がおかしい人と思われるかもしれませんが、周りの人達に「失敗」と言われるからそれを「失敗」と呼ぶ人達もいるんだなぁ~、という感じでとらえています。確かに想定外のことが起きて、悔しくて悔しくて涙がこぼれそうな事はありますが(40歳を超えたおっさんなのに。。。)、本心では「失敗」と思っていなかったりします。今回は思ったほどうまくできなかっただけであって、次回うまくいけば全て過程になると思っています(我ながら幸せな考え方ですね)!こうやって文字にすると単なる負けず嫌いなだけな気もしてきますね...。そういえば子供のころから筋金入りの負けず嫌いだし、それも事実だと思います。

 

それはともかく!

 

新しい事をやる時には想定外の事がつきものですこの想定外の出来事が起こることを「失敗」と言うならば、新しい事をやれば「失敗」は山ほどあります。そもそも少なくとも自分にとって未知な事に挑戦をするということは未知の事を既知にしていく作業なので、未知との遭遇、つまり想定外の事との遭遇、は必然的な過程でしかありませんこれを「失敗」と呼ぶのであれば、「失敗」を重ねる事そのものが未知な事に挑戦する事になります。頭がこんがらがりますが、要は「失敗」を重ねないと新しい事はできない、ということ。だから私自身はこれを「失敗」だなんて全く思っていなくて、未知との遭遇は必要な過程であって前進している証としてとらえています。

 

その方が精神衛生上もいいですしね。恥ずかしい思いは少しするかも知れませんが、他人は自分のことをそんなに見ているわけでもないので、「失敗」したと思われてもすぐに忘れられていきます。気にしない、気にしない(一休さんのセリフですね~)。

 

この未知との遭遇の過程の最中にいる時に、往々にして他人には「失敗」とか「成果なし」と見えるようだけれど、それを気にしていたら生きていけないです。未知との遭遇の期間は長期にわたったりもするけれど、あるタイミングで一気に目に見える成果になりますその時を信じて努力するしかありません。もちろん成果に至る前に外部環境によって終了してしまうこともあるけれど、それは悔しい思いはするが仕方が無いことだとして割り切ってしまいます。

 

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仮説と検証

この失敗を重ねて試行錯誤する過程は研究に通じるものがあります。研究では、仮説を立ててたらそれを実験などを通じて検証を行います。これはまさに未知な事を既知にする作業そのものです。研究では既知になった事実を元に仮説を修正して再度検証を行うという過程を繰り返します。そしてある段階で論文化できる程度の仮説検証が蓄積されて、初めて成果として認知されることになります。

 

研究者生活を通じて感じていたのは、この仮説検証プロセスが苦手な人が結構多いということです。同級生や後輩をたくさん見て接してきましたが、短期的に目に見える成果が無いとモチベーションを維持できない人がたくさんいました(これは心理学的にもそうらしいですね)。これは性格的に研究に対する向き不向きがあるように感じています。こう言っては元も子もないけれど、どのような子供時代を過ごしたかに関係するようにも感じています。大学院に来る頃にはほぼ向き不向きが決まっていて、大学院で指導教官や同僚が一生懸命手助けしても研究に不向きな人が急に開眼するようなことは見たことがありません。指導者が支援をすれば言われたことはこなせるようになるけれど、自律的にはなかなできません。(皆さんその後は研究以外の道でご活躍していますのであくまでも研究に対する向き不向きの話です。)

 

本題に話を戻します。

 

大企業と比較してベンチャー企業では小さな失敗が許容される、というか失敗が多発しやすいというのも事実です。なぜなら社内のメンバーが限られているので大企業のように経験が蓄積されていないので、大企業では考えられないようなトホホな失敗が起こります。ベンチャー企業では「失敗が許容される」と言えばかっこいいが、要は実力的にたくさん失敗してしまう状況なんです。この「失敗」は恥ずかしいものではありますが、その恥ずかしさを受け入れても「失敗」にはそれを上回るメリットがあります。それは「失敗」から痛烈に学ぶ事救いの手を差し伸べてもらえる場合がある事の二点です。

 

「失敗」から痛烈に学ぶ事は特に説明不要だと思いますが、痛い目にあった方が、恥ずかしい目にあった方が心底学ぶ事になります。一時は恥ずかしいけれど、確実に成長します。半分意図的に「失敗」することもあるくらいです。例えば取引先相手のいる仕事の最初の方で小さな「失敗」をすると、取引先には私達が経験不十分であることが伝わります。そうすると取引先相手が仕事の内容を詳細に教えてくれたりします。本来は私達自身でお金を払って勉強しなくてはいけないような専門的内容も取引先に教えてもらってしまう事もあります。実際に仕事に関わる内容を教えてもらうので、本やセミナーで勉強するよりも実践的で確実に身に着きます。恥はかくけど得られるものは大きいです!

 

とにかく「失敗」は未然に避ける事に時間を使ってしまうよりも「失敗」しても素早く立ち直る事の方が大切。その方が使う時間に対して成長は大きいです。高校時代のラグビー部の恩師が「タックルされて倒れない事を目指すな、何度倒れてもすぐに立ち上がる事を目指せ」と言っていましたが本当に良い言葉ですね。「失敗」しない事を目指すのではなく、「失敗」してしまっても何度でも素早く立ち上がることが大切です。

 

また「失敗」のもう一つのメリットである、救いの手を差し伸べてもらえる場合がある事についてですが、これは自分達の至らない点を見て親切にも助けてくれる人達がいたりする事をさしています。これは私達ベンチャー企業側から期待するものでは全く無いですが、格好悪くてもがむしゃらに頑張っている姿を見て、「あーーこの人達は本気でプロジェクトを前に進めようと思っているんだな」と思ってくれて協力を申し出てくれる優しい方々が登場したりします。何度このような良い人達に救われてきたことか!!感謝してもしきれないです。

 

またベンチャー企業で「失敗」が許容される他の理由としては、創業したてのベンチャー企業ではそもそも失う「信用」や「ブランドイメージ」が無いからというのも大きいと思います。仮に再起不能な失敗をしても「あーーーベンチャー企業だから仕方ないよね」と思われる事が多いのではないでしょうか。つまり信用が低い。一方で大企業はブランドイメージも高く、社会的信用度が高い。だから大企業が恥ずかしい失敗をするとブランドイメージが棄損する可能性があって、ひいては既存事業を駄目にしてしまう可能性があります。だから大企業が「失敗」を嫌うのは合理的だと思います。大企業のサラリーマン取締役や執行役員が自分の保身に走っているからという理由では無いと感じます。たとえ短期的であっても企業価値を損なうことを株主がなかなか許容してくれないのではないでしょうか。

 

長くなってしまいました。。。次回は3つ目の「意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから」について書いてみます。

  

【なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズ】 

  1. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1 - スタートアップであっぷあっぷブログ
  2. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 2 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  3. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 3 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  4. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 4 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  5. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 5 - スタートアップであっぷあっぷブログ

 

【関連するおすすめ本】

 

 

 

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なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1「開発が遅れると会社が潰れるから」

ベンチャー企業(スタートアップ)の方が製品開発スピードが速い

 

これは非常に良く言われる事ではないでしょうか。一般論は色んな所で議論されているのでここでは日本の大企業、アメリカの大企業、ベンチャー企業で実際に働いた自分自身の経験から感じている事を述べてみようと思います。長くなるので複数回に分けて記載します。なお私の体験は製造業に関するものなので、きっと他の業界では状況が違うと思うのでその点はご了承下さい。

 

ベンチャー企業の方が製品開発速度が速い理由

結論は次の通りです。

  1. 開発が遅れると会社が潰れるから
  2. 小さな失敗が許容されるから
  3. 意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから
  4. 専門性の高い他社に業務を委託するから
  5. 社内ルールや行事が必要最小限だから

 

以上の項目はそれぞれ独立なものというよりは相互に関連しています。1-5の各エントリーのリンクはこちらです。今回は1の「開発が遅れると会社が潰れるから」について書いてみたいと思います。

 

【なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズ】 

  1. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1 - スタートアップであっぷあっぷブログ
  2. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 2 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  3. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 3 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  4. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 4 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  5. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 5 - スタートアップであっぷあっぷブログ

 

1. 開発が遅れると会社が潰れるから

これは文字通りの意味で、開発遅延が起こると資金が足りなくなって会社が潰れてしまう事を指しています。会社では人件費や家賃など会社の業績の良し悪しに関わらず支払わなくてはいけない支出があります。いわゆる固定費です。開発が遅延すれば売上の無い期間が延びる一方固定費は払い続けなくてはいけないため、創業したばかりの私達のような小さなベンチャー企業には死活問題になります。私の会社の場合、家賃は低く抑えているので、固定費はほぼ人件費になっています。成果を出すためには戦力になってくれる社員の人達の協力が不可欠なため、モチベーション維持のためにも報酬を下げるのは難しく、固定費削減には限界があります。

 

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私の会社ではベンチャーキャピタル(VC)から投資を受けて製品開発を行っていますが、投資額は投資を受けた時点の計画に基づいて設定されています。投資家にばれないようにこっそりとある程度遅延を見込んだ計画を経ててはいても、プロジェクト中のどこで遅延が発生するかが判らない状況なので、少しの遅延でもとても怖く感じてしまいます。私がビビりすぎなのかも知れませんが。そのくらいベンチャー企業経営者にとって遅延はものすごいプレッシャーになっています。会社から出ていく固定費との兼ね合いはありますが、いくらかの追加費用を払うことになったとしても、遅延を回避するために全力を尽くしたくなります

 

もちろんVCからの追加投資などを依頼する事も可能ですが、VCからは追加投資の前に打てる手は全て打つ事を求められます。そうでなければVCとしても通常はお金は出してくれません。なので追加投資を受けるのも結構大変です。。。更に追加投資を受けると持ち株比率が変わってしまうので株主間の調整が必要になります。複数の株主がいる場合はこれも大変な作業になります。またVCは追加投資することにより、一層高い価格でのExitを当然望みます。つまりVCからは企業価値がより高くなる事を期待されます。これは経営者にとってはさらに強いプレッシャーがかかることになります。考えただけで胃が痛くなりますね~~。だから私は追加投資をもらわなくても良いように全力を尽くしています。

 

一昔前に「〇〇億円(高額)も調達しました~!イエーイ!」という感じのベンチャー企業経営者を良く見かけましたが、正直言ってその人達の気が知れません。Exitが大変になるのに...と思ってしまいます。プレッシャーにならないのかなぁ。そういう図太いメンタリティは学びたいです!

 

遅延に話を戻すと、私の会社で実際に起こった遅延はこんな感じです。

  • 業務を委託した会社さんに契約通りの仕事をしてもらえず遅延
  • 業務委託する会社を変更したために開発に手戻りが発生して遅延
  • 業務を依頼した外部コンサルが時間を浪費している事に気づかず遅延
  • 想定外の技術課題が見つかり、その対策のために遅延
  • コロナウイルス蔓延のためアメリカで実施予定だった試験ができず遅延

 

影響が大きかったのは業務委託をした会社さんに契約通りの仕事をしてもらえなかった事とコロナウイルス蔓延のためアメリカで実施予定だった試験ができなかった事でした。

 

大企業からベンチャー企業に移ってカルチャーショックだったのは、契約を守ってもらえない事がまあまあ発生する事です。自分達がベンチャー企業だと会社の信用度が低く、お付き合いしてくれる会社さんも少なくなります。お付き合いしてくれる数少ない会社さんの中には契約を重視しない会社さんがまあまああるんですよね!びっくり。

 

つまり自分達の会社もそうですが、信用度の低い会社さんとお付き合いしながら仕事を進めなくてはいけなくなります。会社の信用度が低いって大変だなぁ...(悲哀)。大企業に勤めていた時は契約を結べば守ってもらえるものだと思っていたんですけどね。世間知らずでした。契約違反だと言って訴訟するという手もあるにはあるけれど、ベンチャー企業なんて訴訟している間に資金が底をついて潰れてしまいますからね。現実は厳しいです。完全に足元を見られてしまっている感じです。悲しい~!!

 

話を戻して、遅延を回復することについてこれから書いてみようと思います。

 

このように生じた遅延を回復するために、業務委託先をすぐに変更し、遅れを取り返すためにそれまでに得た知見を次の業務委託先に全てつぎ込むことを行いました。業務委託先の変更にはかなり迷いがありましたが、他の取締役に「駄目な人はいつまで経っても結局駄目なままですよ」と言われ決断をすることになりました。ほどほどにもめた上に追加費用も必要になったけれど、結果としては遅延を最小限に食い止めることができて良い結果になりました。経営者が判断を誤ると一気に会社が傾くという痛い経験になりました。高い授業料を払いました...。でも不幸中の幸いなことに、追加の費用発生を受け入れて早めに方向転換の決断を下したのが結果として良い方向に転がりました。ラッキーです。

 

またコロナウイルス蔓延は完全に想定外の出来事でした。世の中の誰もが予想できなかったことですよね。

 

とはいえ資金の減少は待ってくれません。2020年の2月頃には「2か月くらいしたら収束するだろう」という甘い見込みを持っていました。ところがあれよあれよという間にパンデミックになってしまい日本から出られる状態では無くなってしまいました

 

元々日本では実施ができないと言われていた試験だったためかなり焦りましたが、日本国内でなんとか試験が実施できないかと模索したところ、めちゃくちゃラッキーな事に日本でも試験ができることになりました!九死に一生を得ました。

 

パンデミックの影響で4か月の遅延が出てしまいましたが、きちんと試験が実施できたのは不幸中の幸いでした。アメリカに渡航できる時期を待つという決断をしていたらもっと遅延は大きくなってプロジェクトは終わっていたと思います。考えただけでゾッとします...。振り返ってみると最悪の事態(アメリカに渡航できない事)を想定し次善の策を求めて行動しまくったのが良かったと思います

 

このように見ると遅延の回復のために早々と次善の策を取る事が肝要だったと思います。

 

これと比較して大企業ではどうだったかという事は後に書きますが、私の経験では大企業では計画を変更することと遅延回復のために追加費用の支払いを決断することが難しいと感じています。

 

また大企業ではプロジェクトが遅延しても会社がすぐに傾く事は無いでしょうし、社員も解雇されることも無いので、計画遅延に対して感じるプレッシャーがベンチャー企業ほどには強くありません。特にコロナウイルス蔓延のような不可抗力的な事態が起きた場合には誰もが「仕方ない」といって遅延を受け入れてしまうのではないでしょうか。そこで働く社員にとっては素晴らしい環境ですが、開発速度という意味では遅くなります

 

次回は2の「小さな失敗が許されるから」について書きたいと思います。

 

=== それぞれのエントリーは以下 ===

 2 小さな失敗が許容されるから

gorilyn.hatenablog.com

 

3 意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから

gorilyn.hatenablog.com

 

4 専門性の高い他社に業務を委託するから

gorilyn.hatenablog.com

 

5 社内ルールや行事が必要最小限だから

gorilyn.hatenablog.com

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政府機関の調査が来た

先週、自分の会社に政府機関からの実地調査が入った。特に怪しげな事があったから調査が入ったわけではありません。今度新しく製品を上市する前に、自分の会社の品質管理体制に問題が無いかどうかの確認のための調査です。

 

悪い事していないのにお役人の前ではめちゃくちゃ緊張します。悪い事していないのに交番の前を通る時に緊張するのと同じ感覚です(皆さんは緊張しませんか?)。

 

僕の緊張とは裏腹に、政府機関から来た3名の調査員は皆さんとても親切な方々でした。このコロナウイルス蔓延のさなかにご苦労様です。

 

産まれて間もないスタートアップ企業なので、恐らく調査員の目から見るとまだまだ不十分だったのだと思います。調査という名目ではありましたが、プロからコンサルを受けているような感覚でした。勉強になったな~。目標の立て方とか、教育訓練の仕方とか、文書の残し方とか、データ分析の仕方とか。奥深いな~。

 

僕の会社ではこれまで新製品の開発が主だったせいか、品質保証や品質管理が弱いということに気が付いた。品質保証や品質管理のプロを雇って、体制を強化しないといけなそうだ。

 

会社のフェーズが一歩進んだ証拠かな。嬉しい。

 

会社のフェーズが進む度に社員の人達の業務範囲や働き方が変わってきているが、皆さん良くついてきてくれている。皆さん優秀だなぁと感心しきり。もちろん会社のフェーズの進み方にうまくついてこれていない人もいて、その人にはお願いできる仕事がほぼ無くなってしまっている。どうしよう。。。他のスタートアップの経営者と意見交換をしてみたいな。

見て見ぬふり??

物凄く久しぶりにブログを更新!書く事を習慣化しようと思ったものの全くできず、、、反省。「見て見ぬふり」でブログ更新をさぼってしまいました。

 

今日は私もできていないこんな「見て見ぬふり」について書こうと思います。

 

仕事を社員の方や外部コンサルタントの方にお願いしてきましたが、目標未達や計画遅延を繰り返す人がいます。また同じ人であってもある業務は目標以上の達成度をみせるものの、ある特定の業務に限っては目標未達や計画遅延を繰り返したりしています。

 

相手はプロだからと考えて仕事の進め方はお願いした人達にお任せし、達成度や進捗だけを確認しているとズルズルと目標未達や計画遅延を繰り返す場合が出てきます。その理由を聞くと最もらしい回答が返ってくるので「そうですか、そうですか」と納得して仕事をお任せするのですが、待てど暮らせど一向に改善しません。そうこうしているうちに計画遅延が会社運営にとって危険な領域に差し掛かってきます。私のアクションも遅いのですが、そこで「これはやばい!」と思い立ち目標未達や計画遅延を繰り返している業務に介入します。

 

そうすると多くの場合が次の二つのどちらか、もしくは両方の問題が起こっています。

  • 何をやったら良いのかが判らない
  • 遅延をした方が個人的な利得が大きい

 

 どちらの場合も担当者は目標未達や計画遅延について「見て見ぬふり」をして、目標に向かっているかどうかは無関係に自分のできる事ややりたい事だけをこなし続けている状態になっている事がとても多い。自分のできる事をやるのは当たり前に思うかも知れませんが、自分にできなくても必要な事柄があればだれかに助けを求めないと進んでいけません。自分の得意領域から外れる事や自分自身の対応力を超える場合には助けを求める必要があります。本人も気づかない間にそのアクションが取れていない事が往々にしてあります。

 

「遅延をした方が個人的な利得が大きい」とは例えば成果報酬では無くて時間給で働いている状態の方を指します。なるべく時間をかけた方が報酬額が上がる場合です。もちろん時間給で働く人達のほとんどは意図的に遅延を起こすことはありません。ただ稀に時間給の方で意図的としか思えない遅延を起こす人がいます。特に時間で課金される外部コンサルタントにこのような傾向が見られがちです。目標未達や計画遅延を指摘してもとぼけたり、業務内容をブラックボックス化してなるべく長い時間をかけようとする人もいました。仕事をお願いする立場からすると、時間とお金をかけても一向に成果に繋がらないわけですので非常にストレスが溜まります。この人には成功報酬型にしたいと申し出ましたがかたくなに断られました。結局この人とは信頼関係が持てず仕事をお願いする事は無くなりました。

 

 それで目標未達や計画遅延を繰り返す業務に介入する場合には次のようなステップで介入します。

  1. 目標設定をより短期的な目標に分解する
  2. 目標に定量性を持たせる(目標達成の基準を可能な限り具体的に決める)
  3. 目標達成までの具体的なアクションを決める
  4. 進捗をこまめに確認する
  5. 問題が生じた場合は即座に目標の修正を図る

 

 私の過去の経験では上記の1か2のステップがうまくできておらず、業務が停滞してしまっている場合が多いです。人によっては上記のステップの1だけ、もしくは1と2だけ支援をすると見違えるように業務が進み始めます。また3のアクションの際に専門的な支援が必要な場合は、誰か支援している人の協力を得るようにします。こうすることでだいたいは業務が前進するようになります。

 

こうやって振り返ってみると、私がブログの更新ができていないのは、短期的な目標設定がうまくできていない事に原因がありそうです(汗)。

 

ということで!ブログを毎日や毎週更新するのは難しいので、毎週少なくとも一度はブログの文章を書いてみる、ということにしたいと思います。

 

人のふり見て我がふりなおします!

2019年の振り返り: 取締役の変更

いよいよ2019年も残りわずか。本当にあっという間に2019年が過ぎ去った気がする。でも改めて振り返ってみると2019年初頭の事柄はもう何年も前の出来事のように感じる。進展が大きかった証なのか、トラブルが多かった証なのか、充実していた証なのか、それとも単に記憶力が悪いせいなのか。。。

 

仕事について振り返ってみると「取締役の変更」と「取引先の変更」の二点が最も大きな出来事だと感じている。二つともヒトに関することだなぁ。心を砕くのはヒトとの関係性なのかも知れない。あーーーー胃が痛かった。

 

取締役の変更

 

これは以前にも記載したが大企業出身の方を取締役に迎えたらエライ目にあった出来事。私達の会社にはあまりにもフィットしなかった。他のメンバーを見ながら感じるのは彼が私達の会社にフィットしなかった点は「自分の専門外の領域に出て仕事をすること」と「迅速に決断を下し行動に移すこと」の二点だったのではないかと思う。

 

一つ目の「自分の専門外の領域に出て仕事をすること」についてはベンチャー企業特有の事情が関連している。ベンチャー企業は資金も人員も非常に限られているケースが多い(私達の会社だけかもしれないけど...)。あるプロジェクトを完遂しようとすると様々な専門性が必要になる。しかしながらベンチャー企業では人員に限りがあるため社内に全ての専門性を取りそろえるのはほぼ不可能な状態にある。そのような場合には社外から必要な専門性を調達しなくてはいけないが、社内でもある程度の知識が無ければ仕事の依頼や納品物の評価すらできない状態になる。従って社内の誰かが「自分の専門外の領域」の勉強をある程度はせざるを得ない(多くは走りながら考える状態)。また、社内の資金が不足していればそもそも社外に依頼する事もできず、社内のメンバーが勉強をしながらプロジェクトを進めざるを得ない。

 

先の大企業出身の元取締役の方はこの「自分の専門外の領域」に出る仕事をしたがらない人だった。豊富な社員数、多様な専門性を取りそろえる大企業であれば、この元取締役の方のような姿勢も許容されるのかも知れない。それぞれ専門性の高い人が対応した方が、全体として効率も良い。しかしながら資金も人員も限られた私達の会社のようなベンチャー企業では圧倒的に物足りず、プロジェクトを前進させるには効率が悪いと判断されてしまう。会社のサイズが小さくなると個人の守備範囲は広くなる。

 

二つ目の「迅速に決断を下し行動に移すこと」について。先の大企業出身の元取締役は、とにかく決めたがらない人、責任を取りたくない人だった。取締役がこの態度ではそもそも会社は動かなくなってしまう。「私は決められた業務を黙々とこなすことが大切だと思います」と彼は言っていた。耳を疑う発言だった。プロジェクトのゴールや会社のゴールをまず定め、そのゴールへのアプローチ方法を決め、実際にそれに従って仕事を進めていくことになるが、取締役がゴール設定やアプローチ方法を決めたくないと言っていたら誰も動けない。組織は止まる。従業員的な発想が強すぎたように思う。先の元取締役の方は、大企業では管理職ではあったものの取締役では無かったので、従業員的な考えにはなじみが無かったのかもしれない。

 

もう一つ。会社ではアウトプットの有無にかかわらず固定費(人件費など)は発生する。当然ながら短い時間で多くのアウトプットを出すことが望ましい。プロジェクトが遅延することの意味は、アウトプットが無い状態で固定費だけ発生してしまうことになる。つまり資金力の乏しい企業ではプロジェクト遅延は倒産に直結する大問題になる。なので間違った決断を下して行動してしまうのも、決断しなかったり行動しなかったりで時間を浪費するのは実は大差がない失敗を恐れて決断をしなかったり行動しないのは、ベンチャー企業ではそれは100%の確率で「失敗」になる。「失敗をしたくない」という考えが強すぎる人もベンチャー企業に向かないだろう。私も大企業での勤務経験があるが、私が勤めていた大企業は減点方式だった。自ら提案して、それが失敗すると、それは減点対象だった。提案するのはほぼ加点評価されていなかった気がする。だから自らは何も提案せず、上司の方針に従って黙々と仕事をこなす人が評価が高かったように感じていた。考えてみればこのような環境からベンチャー企業に移るとすぐには対応できないのも無理はないかも知れない。

 

いずれにせよベンチャー企業では、判断が必要なタイミングにおいて判断材料が不足するのは常なので、仮説を立てながら行動に移し続け状況を見ながら修正をし続けるしかない。仮説を立てて、その仮説を修正することは失敗ではない。必要なプロセスだ。そもそも仮説が最初から合っていると考えるのは傲慢だと思う。私は将来の事が全てわかっている、と言っているようなものだ。そんな人はこの世に存在していないと思う。仮説を高速に修正していく方が大切だと思う。

 

話は逸れるが、この仮説を立てて行動を起こし、結果を見つつ仮説を修正していくプロセスは研究のプロセスとそっくりだ。研究でも仮設を立てて、その検証方法を考え仮説の検証を行う、というプロセスの繰り返しになる。ゴールに近づく仮説の作り方や検証の仕方が研究者のセンスのように思う。これとベンチャーでのプロセスは似ている。

 

やめてもらうのも本当に大変だった。。。それはいつかまたの機会に。

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大企業勤めとスタートアップ勤めの働き方の違い

 私の勤めているスタートアップで働いてくれる人を募集していてある知人から「あなたのスタートアップで働くための最低要件は何?」と聞かれて答えたのが以下の項目です。

 

  • 個々人の担当領域がだいぶ広い
    • 裁量と責任の範囲が広くなる(職位が高めになる)
    • 裁量をもって仕事ができるし新しい経験が蓄積できる
    • 一方で未経験の事であってもなりふり構わず次々と仕事をしていかないといけない
  • 仕事環境はまだ整っていない
    • 自分達が仕事しやすい環境を作る事ができる(在宅勤務など)
    • 逆に言うと庶務などの支援業務はほとんどない
  • 時間がタイト
    • 承認プロセスがかなりシンプルなので判断が速く非常にスピーディーに仕事が進められる
    • とにかく行動に移してアウトプットを出し続けることが重要。行動、行動、行動!
    • スピード重視にならざるを得ないため、情報や準備が不足する段階で判断をしなくてはいけない場合が多々ある

 

即戦力を求めているのは間違いないですが、それ以上に働き方の合う合わないが重要だと感じています。

 

大企業に長らく勤めていた人を見ていると「決断することに恐怖感を持ちがち」だと感じます。スタートアップでは情報が不十分な中でも次々に決断をして行動に移していくことが必要になりますが、大企業だと決裁者が何人もいたり上司が決断したりするせいか、自分一人が責任を持って決断をする機会が少ないように思います。決断を下すことに慣れていなくて不安に思うようです。

 

失敗をしたくないばかりに決断を避ける人が見受けられますが、創業直後のスタートアップでその姿勢だと困ると思います。責任を回避したいように見えてしまいます。スタートアップは前進し続けないと潰れてしまいますので、決断をしないのは失敗することと同じことです。実際の失敗からは学びがありますが、決断をしないことからは学びが無い分、やってみて失敗することよりも質が悪いです。

 

その時得られた情報からベストと考えられる決断を行い、もしもそれがうまくいかなくて方向転換が必要になればその時になぜうまくいかなかったかを考えて次に活かすことが大切だと思います。

 

とはいえ決断を下すことって本当に大変なことですよね!私も脳みそがめちゃくちゃ疲れます。でもその積み重ねこそが自分を成長させていると実感しています。No pain, no gain ですね~。 

 

反対に大企業で働く事の特徴はこう言えるのではないでしょうか。もちろん状況によって異なりますのであくまでも傾向としての話です。

  • 特化した領域で専門性を高められる
    • 先達が多く指導も受けられるため専門性を高めやすい
    • 一方で仕事の全体像が掴みにくく、場合によっては部分最適化に陥ってしまう
    • 幅広い経験が比較的得にくい(転職に不利??)
    • 出世するまでに時間がかかる(マネジメント経験を積み始めるのが遅くなる)
  • 自分の役割に集中できる仕事環境が整っている
    • 庶務などの支援業務も充実していて自分の役割に集中しやすい
    • 福利厚生も充実していて働きやすい
  • 比較的時間がゆっくり
    • 速さよりも確実性や精度の高さを求められる場合が多い
    • 一方で新しい事を始めるのが本当に大変!

 

こうやってみると大企業って良いですね~。メリットが多いです。大企業で楽しくやっていける人はそれも才能なので、大企業で働いているのが合っているように思います。

 

私のように新しい事をやりたくて仕方が無い人がスタートアップで働くことになるのかもしれませんね~。

 

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