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読書感想「日本人の9割が知らない遺伝の真実」安藤寿康

言ってはいけない残酷すぎる真実」橘玲を読んだ際に最も興味を引いたトピックが双生児を用いた遺伝に関する研究だったので、その引用元になっている安藤寿康さんの研究内容を知りたくて本書を読みました。

 

gorilyn.hatenablog.com

  

最も響いたのは「あらゆる文化は格差を広げる方向に働く」という章に記載されている次の文章です。

『教育が一部の人にしか与えられないときは、能力や知識の個人差は、その教育を受けたか受けなかったかという環境の差で説明される割合が大きいでしょう。しかし教育があまねく行き届いたとしたら、そのときに顕在化するのが遺伝的な差なのです。』

 

なるほど~!と感心しました。確かに環境が同程度もしくは十分なものであれば差を生むのは遺伝的な違いになりそうです。教育機会が均等になればなるほど持って生まれた遺伝の差が強調されるのは目から鱗が落ちる思いでした。誰でも公平に教育が受けられる事を目指したのに、結局遺伝に大きく影響される結果を招いたのは皮肉な感じがします。

 

ただ個人レベルに視点を移せば、遺伝子は変えられないので教育を受けることで本人の能力や知識が向上するのは間違いがないので、教育には依然として大きな意味があります。

 

あと興味深かったのは「収入と遺伝に関係はあるか?」というトピックです。

 

 いくつかの研究例の紹介がありましたが、最も興味を引いたのは年齢を考慮した研究結果です。年齢が上がるにつれて収入と遺伝の相関が高くなるとの結果だそうです。

 

  • 約20歳時点 --- 遺伝 20%, 共有環境 70%
  • 約45歳時点 --- 遺伝 50%, 共有環境 ~0%

 

若い時の収入は家庭環境のような共有環境で決まり、働き盛りの45歳時点では遺伝で収入が決まる傾向があるということです。

 

これは僕の実感に合います。教育熱心な親に育てられた子供は大学や大学院に進み、比較的給与の高い会社に入るなどして高めの収入を得ているように思います。働き始めたばかりは先輩や上司から言われた事をこなすことで評価をされる事が多いと思います。しかしながら働き始めてしばらくすると状況が変わり、前例の無いような状況で判断と努力を重ね成果を上げ続けなくては高い収入を得られなくなります。この場合はどんな教育を受けてきたかよりも、不確定な状況を恐れずに挑戦やプレッシャーを楽しめるような性格であったり、他人の協力を取り付けられる人当りの良さが併せて重要になります。これは遺伝によるところが大きそうです。実のところこのような性質は、本書を読むまでは子供時代の過ごし方で決まると漠然と思っていました。遺伝なんですね。。。

 

とても面白かったです!知的好奇心が刺激されます。世の中には分かっていないことが多いですね!わくわくします。これは友達にお薦めしたくなる本です。

 

「日本人の9割が知らない遺伝の真実」安藤寿康

 

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(追記)

行動心理学の研究分野については僕は全く知りませんが、複数の角度から検証が行われていることに言及されていたので読んでいて安心感がありました。さすが研究者が書いた本だなと感じました。僕は「言ってはいけない残酷すぎる真実」よりも本書の方が好みです。