スタートアップであっぷあっぷブログ

元研究者のスタートアップ経営者がスタートアップでの経験やキャリアについて発信するブログ。雰囲気ゴリラ似。

記事「東芝、幹部候補をスタートアップに出向」:スタートアップから見るとこう思う

2021年1月4日の日経に「東芝、幹部候補をスタートアップに出向」という記事が掲載されました。世の中にこんな制度があることを私自身は知らなかったのでとても興味深く記事を読みました。どうやら1年間スタートアップに社員を出向させる制度らしい。

 

www.nikkei.com

 

私達のベンチャー企業(スタートアップ)で大企業から人を1年間だけ受け入れるとしたら私達が感じるであろうことを書いてみたい。

 

まず第一に優秀な人材が来てくれるなら嬉しい!しかもタダで!これはすごい。東芝さん、私達の会社も候補にいれてくれないかなぁ。。。

 

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私達の会社では人材採用で苦労しています。信用も知名度もないから無理もありません。特に私達の会社はステルスモード(大っぴらに宣伝しない状態)なので何をしているのかほぼ公表していません。そんな会社に人に来てもらうことは本当に難しい!

 

Indeedで社員募集をかけたことをありますが、1件しか応募がありませんでした。その1件も残念ながらマッチングせず結局採用はできませんでした。普通に募集したら若い大企業出身者なんて来てくれる可能性はほぼありません(涙)。

 

結局私の過去の職場での先輩や後輩に来てもらってようやく成り立ってる状態になっています。(近々スタートアップでの採用に関する記事を書こうと思っています。)

 

私の会社に来てもらっている人達を見ても、大企業の採用プロセスを通っている人の基本的な能力はとても高いです!大企業の人事ってすごいなぁと心底思う。応募者も優秀な人が揃っているのでしょうね、きっと。

 

しかも1年間の期間限定であってもスタートアップとしてはものすごく多くの事が起きるので、決して短期間ではありません。1年前の事はものすごく遠い昔のことのように感じます。そもそも社員も離職する可能性があるので1年だから短すぎるということはないと感じています。

 

会社にフィットしない人が出向してくる可能性もありますが、スタートアップ側で給料を払うのでなければ全く問題ありません。冷たい言い方になりますが、その場合は会社で寝ていてもらっても構わないくらいです。マイナスになる事をしてくれなければそれで大丈夫。

 

唯一の心配事は大企業側への秘密情報の流出でしょうか。いくつか他社への業務委託や共同開発をしていたりするので、そういった情報が流出してしまうのが困ります。

 

 

一方で大企業でも勤めていた経験から、東芝(大企業)側からみるとこの制度のメリットと必要な対策はこのようになるのではないかと思います。

 

メリット

  • 出向者に様々なリアルな経験を超高速に積ませることができる
  • 出向者に経営に近い業務を経験させられ経営の適性を見ることができる
  • 出向者に出身企業を客観的に眺める機会を提供できる
  • 出向者にスタートアップの行動原理を理解させることができる

 

必要な対策

  • 出向終了後の適切な業務設定
  • 適切なインセンティブ設計や評価項目設定
  • 定期的な状況確認

 

対策に関して補足すると、出向して本人が成長しても出向元に戻って以前と同じ業務を続けると物足りなさを感じて離職するようになるから、成長を見越した業務や責務を提供しないといけないと思います。これは海外駐在経験者の離職率が上がることと同じ構造を持っています。

 

私も海外駐在経験があるので、身をもって感じます。出向元での業務であったり、裁量の少なさが物足りなくなるんですよね~~。しかも出向先でどのような経験をしてきたのか元の会社の人からは見えないので、出向中の「成果」は出向元ではゼロカウントにされているんですよね...。「出向先で成果もあげたし成長もしたぞ!」と本人は思っているのに周りの人達がそのようには思っていないのでギャップが生じて本人は居心地の悪さを感じます。

 

また適切なインセンティブ設計や評価項目の設定も重要です。スタートアップの成功と本人の評価がリンクしていないと、スタートアップでの業務に対して本気度が上がらない。正直言ってスタートアップ(特に経営層)の環境は過酷で、大企業の給料制度では過酷さに見合わないです。一般従業員という立場であれば別だけれど、東芝(大企業)が期待するのは恐らく経営層に近い業務経験ではないだろうか。そうなるとインセンティブ設計が難しくなります。まあ出向する本人の特性にもよりますが。

 

またスタートアップも千差万別でブラック企業も存在していると思います。このような環境で心を病んでしまう社員も出てくるのではないでしょうか。なんだかんだ言って大企業は社員を守る制度や文化が定着していますからね。スタートアップは余裕が少ないので、そういう制度や文化の醸成は後回しにしがちです。なので出向元の会社としては、定期的に出向者のフォローアップが必要だと思う。これも海外駐在員の派遣と同じような考えです。

 

いずれにしてもこんな制度があるなんて面白いなと思いました。僕が大企業からの出向者だったらスタートアップが面白くなって大企業を辞めるだろうな~。「なんだ、スタートアップ楽しいじゃん!生活していけるじゃん!」って気づくと思います。

 

東芝、チャレンジャーだなぁ。優秀で挑戦的マインドを持った人を育てたいのだろうが、そういう人達を選抜して出向させたら会社を辞めていくよね、きっと。出向者本人はハッピーに、東芝は残念な事になるかも。でもやってみないことには分からないからまずはやってみることは大切!展開を見守りたいと思います。

 

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