お薦めTEDトーク4「経験と記憶の謎」
行動経済学者、心理学者のダニエル・カーネマン先生の講演。僕にとっては難しい内容だったので何度か聞き直しましたが、幸福という事を題材にしながら経験した事と記憶との間にある認知の歪みについて興味深い事をお話されています。
僕なりにポイントを上げるとこちらの通りです。
- 「幸福(Happiness)」には、「経験している自分(Experiencing self, 現在の自分?)」にとっての幸福と「記憶の中の自分(Remembering self)」にとっての幸福という全く異なる二つの概念がある。この二つを混同して「幸福」として扱われてしまっている。
- 例えば20分間の素晴らしい音楽を聴いて感動するという幸せな「経験」をしていても、音楽の最後で異音が入ってしまうと残念だったという「記憶」が強く残ってしまう。このように「経験」と「記憶」は異なる。
- 終わりの方の「経験」が特に「記憶」に残る。
- 「経験している自分」にとっての幸福は「どれだけ幸せに暮らしているか」ということ。
- 「記憶の中の自分」にとっての幸福は「自分の人生を振り返った時にどれだけ満足しているか」ということ。
- 「経験している自分」の幸福と「記憶の中の自分」にとっての幸福には相関が無い。
- 未来の事を考える時にも「経験」ではなく「記憶」に基づいて人は判断してしまう。経験をした事実に基づく判断はしていない。
確かに「終わりよければすべて良し」という言葉があるくらい、最後の方の「経験」が「記憶」として残ることは広く認識されているように思います。99%の体験は楽しんでいたのに、たった1%の不愉快な出来事で悪い記憶が残ってしまう経験もしているように思います。言われてみればそうですね。
講演中では大腸内視鏡検査の時間と痛みに関する研究結果も示されていました。
Aの方が処置時間も痛みも少なく、Bの方が処置時間も長く痛みが多いというものです。これは明らかにBの方が悪い「経験」をしています。しかしながらAの方が酷い「記憶」を持つという結果が出たというものです。これはAの検査の最後に痛みのピークが来たためだそうです。この実験でも「経験」と「記憶」が異なることが示されています。
また最後にインタビューもあったのですが、その中で世論調査の結果について触れられていて面白いものでした。世論調査の結果は次のようなものだったそうです。
- 年収6万ドルまでは年収が上がるほど「経験的な幸福」があがるが、年収6万ドルを超えると年収が上がっても「経験的な幸福」は上がらない。
- 「記憶的な幸福」はお金を儲けるほど満足感が増す。
ここでも見事に経験と記憶とで違いが出ています。僕が書籍やインターネットの記事で目にする幸福に関する情報は上の1に関するものを見かけます。これは「経験的な幸福」だったのですね!一方で「記憶的な幸福」はお金を儲けるほど増すという話でした。「幸福」という言葉だけ短絡的に混同して用いると大分異なる結論になりますね!気を付けようっと。
今日は以上になります。ありがとうございました。
TED Talks, " The riddle of experience vs. memory, " Daniel Kahneman
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