【TechCrunch Webinarメモ】 ベンチャーキャピタルを通した事業会社の投資
今日は少しお堅くて少しマニアックな話を。
ベンチャーキャピタル(VC)やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を通して事業会社がどのようにイノベーションを取り込もうとしているかという事に関するパネルディスカッションを聴講したので頭の中の整理も兼ねて記載します。
まとめ
- 事業会社はVCやCVCを通して自社外から補完的な技術を取り入れようとしている。
- 対競合の優位性確保という観点から、以前と比べてCVCがリードポジションを取りたがるようになった。
- 従来CVCは戦略的価値(Strategic Value)を重視していたが近年は金銭的利益(Financial Return)を求める比重が上がってきている。
- 事業会社がよりアーリーステージのスタートアップに投資をするようになってきた。
- CVCやVCを通じて国際的に投資が行われている。
- VC業界の中でもCVCの割合はこの10年間で増えてきた。
- 米国の政権交代の影響は税制と移民政策に関連して出てきそう。
アーリーステージであってもCVCの存在感が今後ますます増すことになりそうに感じました。僕達のスタートアップはExitの目標を事業会社による買収に設定しているので望ましい流れだと思います。一方でスタートアップ側の交渉力が弱いアーリーステージでCVCから投資を受けると不利な条件がたくさん付きそうなので気を付けないといけないなと感じました。
コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)とは
以下がwebinarの詳細情報になります。
タイトル
Understanding Corporate Investing and How it Differs from Corporate Venture Capital
パネラー
- Jim Krenn, Partner at Morrison & Foerster (弁護士事務所, 米国サンディエゴ)
- Anis Uzzaman, CEO & General Partner at Pegasus Tech Ventures (VC, 米国シリコンバレー)
司会進行
- Alex Wilhelm, Senior Editor at TechCrunch (技術雑誌, 米国)
開催日
- 2021年1月20日(日本時間)
詳細メモ
CVCやVCを通じて事業会社が補完的な技術を取り入れようとしているのは従来通りだが、全体的な流れとして自社内の研究開発よりも社外から技術を取り込む流れが広まりそうだとの話でした。
CVCがリードポジションを取りたがるのは、投資先のスタートアップが競合事業会社からの投資を受けたり協議を行うことで情報流出がおきたり、競合に買収されてしまうことを事業会社が懸念しているためらしいです。
これはよくわかります。投資したCVC(事業会社)はそのスタートアップと戦略的な提携を望んでいるため、そのスタートアップに業界の専門知識であったりノウハウであったりを提供するが、そうしたにも関わらずそのスタートアップが競合他社に買収されてしまったり、競合他社から取締役を受け入れる事を通じて提供した専門知識やノウハウが競合他社に流れてしまってはCVC(事業会社)のデメリットが大きくなります(下の図参照)。それを防ぐためにスタートアップに対するコントロールを強くしたいのだと思います。
逆にCVCがリードを取らないと競合他社へのノウハウ流出を恐れるあまりCVC(事業会社)からの情報の出し惜しみがおこり、戦略的な提携が十分に行えなくなる可能性が高いと思う。実際に僕自身もこの例を知っています。事業会社側の懸念ももっともなことだけど、スタートアップ側からしても特定の事業会社から変な「しばり」を要求されるばかりで、専門知識やノウハウは提供されず、事業会社と提携することによる付加価値が低い状態になってしまっています。お互いに不幸ですね。
スタートアップとしては、資金以外にもCVCを持つ事業会社のブランドであったりノウハウを提供してもらえるのは大きなメリットになる一方で、CVCを持つ事業会社の社内事情(方針変更、人事異動、社内政治など)に振り回されるデメリットもあります。本当にバランスが難しいですねーーー!
CVCが金銭的利益を求める傾向が強まっている理由として、CVCや事業会社の担当者やリーダーが異動や退職などで交代してしまうため、戦略的な価値評価が難しくなり、分かりやすい金銭的利益を社内評価項目としている事があげられていました。これなんかも事業会社の社内事情の影響だと思います。
面白かったのはQ&Aで米国での政権交代の影響についてのお話でした。キャピタルゲインの税率があがるという噂があるらしく、金銭的利益を重視するVCやCVCには影響がありそうだとの話でした。一方、トランプ政権では移民を受け入れない政策が打ち出されていて、有能な人材を海外から受け入れにくくなっていたが、移民政策の変更により移民の受け入れ制限が緩和されるというプラスの期待があるそうです。
全体としては、開発製造系スタートアップには追い風が吹いているように感じられた話でした。
それにしても新型コロナウイルス蔓延前には現地で対面で行われていたようなイベントがほとんどオンラインになったので、情報入手は以前よりも簡単になったように思います。シリコンバレーでは毎日のように投資家や起業家の集まりがあちこちで開催されていてそこで情報交換がされていたけど、この集まりがオンラインになることで日本にいても参加できてしまうのは日本に住んでいる僕にはメリットになるなと感じています。折角だから有効活用したいです。
久々にWebinarを聴講しましたが良い刺激になりました!
今日はここまでです。ありがとうございました。