スタートアップであっぷあっぷブログ

元研究者のスタートアップ経営者がスタートアップでの経験やキャリアについて発信するブログ。雰囲気ゴリラ似。

段階によって必要な能力は高速に変化する

ネットニュースで「Netflixが有能な社員のみを残して、全社員の3割を解雇した結果」という記事が出ていました

  

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かしま┃ヘルシーな働き方(@kashima_hr)さんの「人員」に関する投稿が話題になっています。

ベンチャー時代のNETFLIXが資金繰りに困り、有能な社員のみを残して全社員の3割を解雇したところ、急な人手不足で業務が回らないどころか「誰かのミスをフォローする仕事」がなくなり、仕事の質とスピードが大幅に上がったらしい。やはり「愚鈍な味方は有能な敵より恐ろしい」は真理だと思う。

引用元: 

ライブドアニュースNetflixが有能な社員のみを残して、全社員の3割を解雇した結果…企業の理想的な形とは?

news.livedoor.com

 

このニュースを見てまず思ったのは会社にとっての「有能な社員」ってタイミングによって違うのではないかなと言うことです。特にスタートアップは成長に応じて対応しなくてはいけないことがどんどん変化していくので、会社にとって必要な能力も大企業以上に高速に変化していきます。いろんな記事で「0を1にするフェーズ、1を10にするフェーズ、10を100にするフェーズで必要な能力が違う」という事が記載されていますが、このことです。

 

私のスタートアップの例をあげてもう少し具体的に書いてみたいと思います。

 

私のスタートアップは創業してから3年が経ちました。こんな短い間にも会社の立ち上げ、プロトタイプ試作と改良、製品仕様決定、品質管理体制構築と運用、規制当局対応、製品量産化などなどアッという間に段階が進んできました。

 

会社立ち上げ当初はプロトタイプ試作と改良が主な仕事で、その際に求められた能力は「費用をかけずに迅速にコンセプトの有効性確認と大きな技術的課題の洗い出しを行う能力」でした。あり合わせのモノを組み合わせて多少の雑さには目をつぶりながら目的を達成する事が必要でした。この時に発揮される能力は大学の研究者のような能力で、原理確認実験のようなものです。試作したプロトタイプをユーザに評価してもらいながら改良を重ね、競合品を考慮しながら製品の基本的な仕様を決めていきました。

 

基本的な仕様が決まると今度は量産を見据えて製品仕様を決めていきます。製品仕様を決めるには、技術的な課題に加えて、販売数の予測、価格設定、上市タイミングなどを想定する必要があります。この段階になると協力会社との役割分担、費用分担、スケジュール調整などが発生します。この製品仕様決定の際に求められた能力は一言でいうと「プロジェクトマネジメント能力」でした。数多くの事柄を同時並行的に足並みをそろえて進めていかなくてはいけなくなりました。この時に発揮される能力はもはや大学の研究者のような能力ではなく、製品開発プロセス全体を俯瞰してクリティカルパスを特定し、プロジェクト全体を前に進める能力、つまりプロジェクトマネジメント能力でした。多くの人達に動いてもらう能力です。つまり既に会社にとって必要な能力が変化しています。

 

更に製品化と並行して品質管理体制の構築を進める必要がありました。これは製品の品質を担保するために法令に基づいたルールを設定し、その決まり事を運用することです。この段階で求められる能力は、自社の開発製造に適したルールを作り運用する能力です。この能力もプロトタイプ試作や製品化に必要な能力と異なります。

 

このように開発プロセスが進むにつれて必要な能力が変化していることが分かります。

 

この様な状況下で私のスタートアップで生じた問題は、会社立ち上げ当初に活躍したメンバーが徐々に活躍できなくなり、最近ではほとんど任せられる仕事が無くなってしまったことです。会社立ち上げ当初は間違いなく「有能」と評価されたメンバーが、ほんの1,2年で「有能」どころかお願いできることが無くなってしまいました。つまり会社の成長、環境変化とともに「有能」の評価基準が変わっていったのです。

 

Netflixの場合について具体的な状況は知らないので不確かですが、会社の段階が変化した事に伴って、それまで活躍していた人達が活躍できなくなってしまったため、その人達に辞めてもらったら効率化された、という事もありそうだと感じました。スタートアップは色んな段階の仕事が常に混在している大企業とは状況が異なります。

 

スタートアップで働く個人に目を向けてみると、スタートアップの環境変化は目まぐるしいので、スタートアップで働き続けるのであればその環境変化についていける柔軟性と学び続ける貪欲さが必要だと思いますもしくは自分の得意な段階のスタートアップを渡り歩くのが良いように思います。

 

Netflixの事例を検索していると2017年のこちらの記事もヒットしました。Extreme Teamsという本にどうやらNetflixの事が書かれているようです。

biz-journal.jp

 

そしてNetflixの取り組みが書かれている「Extreme Teams」という書籍はこちらです。私も是非読んでみようと思います。 私も悩み中なので先達から学べるものは学びたいと思います。

 

 今日は以上です。ありがとうございました!

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