社内で提案が通らない理由と対策を考えてみた
ある大企業で働く後輩から「社内でいくら提案をしてもいつもいつも却下されてへこむ」という悩みを聞きました。私自身も大企業に勤めていた時に提案をしても毎度毎度却下されて悩んでいた時期があったので他人事には思えず当時の悔しさがよみがえってきました。悔しかったですね~。当時は「なんで上司はわかってくれないんだ!」と憤ってばかりいました。
その後私自身でも上司の立場も経験し、部下の視点と上司の視点を持つ事ができたので、提案が却下される理由とその対策について書いてみようと思います。
目次
提案が却下される4つの理由
最初にまとめるとこの4点です。
- 提案内容が不十分
- 上司のモチベーションが上がらない
- 提案者と上司の関係が悪い
- 提案を実行できない社内事情がある
1から4にかけて提案を通す難易度が高くなっていきます。特に1から3は提案者自身の努力でかなり改善できるけれど、4は提案者には知る由もない事情であったりコントロールできない内容であったりすることが多いため、対策はとても難しくなります。
まず1の「提案内容が不十分」について。
私が上司という立場で遭遇してきた例はこのようなものです。()内はその時の私の心の声です。
- 解決すべき問題に共感ができない(それって本当に問題なの?)
- 解決方法が問題解決につながっていない(えぇ!問題解決しないよね...?)
- 一つの解決方法しか検討されていない(他の方法もあるよね?なんでこれ?)
- 費用、時間、労力をかける割に効果が小さい(効果めちゃ小さいよね...?)
- 提案を実行する時期が悪い(今はもっと集中すべき超重要案件があるじゃん!)
- など
こうやって書いてみると「そりゃそうだ」と思う内容ではないでしょうか。でも実際にやってみるとなかなかできないですよねーー。これは社内提案だけではなくて、他社への提案でも同じことがいえると思います。このように書き出してみるとこの内容は先日投稿した投資家へのプレゼン方法ととても似ているなと思いました。仕事で他の人達に動いてもらうという意味では同じなんですねー。
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あと上司になって感じることが多いのは「提案は嬉しいんだけど、まずはあなたの仕事をきちんとこなして欲しい」ということです。メンバーがそれぞれの役割を最低限果たしたうえで、さらによくなるために提案をしてほしいと感じてしまいます。あれもこれも中途半端になりそうに感じて、提案を一旦とめてしまうことはあります。最低限の役割はしっかりこなしたうえで提案をしてくれると上司も喜んで話を聞きたくなります。
ちなみに自分が大企業で働いていた時にこれができていたかというとできていなかったです。振り返ってみれば上司や周りに甘えていて「分かってくれて当たり前」、「組織にとっていいことだから喜んでくれるはず」という感覚がどこかにあったような気がします。
次に「上司のモチベーションがあがらない」について。
新しい提案が部下から出てくると喜ぶ上司も入れば、面倒くさがる上司もいると思います。人間ですからね。提案を喜んでくれる上司であればラッキーですね!でも内心は提案を喜んでくれない上司も多かったりします。
上司がモチベーションがあがらないのは上司本人にとってのデメリットがメリットを上回っている場合がほとんどではないでしょうか。例えば「すでに仕事はいっぱいあるのに仕事がさらに増えてしまう」や「面倒な社内調整をしないといけない」などです。もしくは「これは自分達の仕事ではない」と思っている場合もありそうです。
肌感覚ではこのケースはかなり多いように感じます。上司としても下手に動いて上司の上司や周囲からひんしゅくを買うのをさけたいと思っている場合があると思います。自分の立場も大切ですからね、わかります。
3の「提案者と上司の関係が悪い」について。
これは感情的な問題です。提案する私達も提案を受ける上司も人間ですので感情の問題は発生します。「何を言うかではなくて誰が言うか」というのは影響力を及ぼそうと考える時は常に重要です。
提案者と上司の関係が悪ければ「お前の言う事なんか聞くもんか」と思う上司もいます。正しい正しくないはさておきこういうケースは多くあるのではないでしょうか。社会人になりたての頃の私は「感情の問題はさておき組織にとって良いことをするのがプロフェッショナルだろ!」といきり立っていましたが、正論だけでは人は動かないということを悔し涙を流しながら学びました。いろんな人が言っている内容ですね。知ってはいたけど分かっていなかった、という状態でした。
逆に提案者と上司の関係が良ければ、上司からいろいろアドバイスも得られるでしょうし、提案を通すように協力もしてもらえるでしょう。人間関係、大切ですね!
最後の4の「提案を実行できない社内事情がある」について。
Reimund BertramsによるPixabayからの画像
これは提案者の立場からはなかなか見えない理由なので難易度が高いものになります。社内事情とは例えば次のようなものです。
- 組織変更がある
- 人事異動がある
- 会社や部門の業績が猛烈に悪い
これらは正式発表があるまでなかなか話すことができないので上司としても辛いところです。この状況で提案者が四苦八苦しても前進するのはとても大変です。
自分自身の経験上、上司が説明になっていない説明をして提案を却下する時はだいたい私(提案者)に言えない事情がある時です。上司が理由を言ってくれれば手の打ちようもあるのですが、理由が明かされないので、この状態のままで前進するのはかなり苦しいです。
提案を通すための4つの対策
これまでに理由を上げてきましたので、ここからはその対策です。先ほどの4つの理由に対する対策はこちらです。
- 提案時にフレームワークを使ってみる
- 上司が動くボタンを押す
- 人間関係を良好に保つように心がける
- 時間を空けて再提案する
1の「提案時にフレームワークを使ってみる」について。
これはかなり我流ですがスタートアップのプレゼンテンプレートを応用してしまうのが良いと思います。提案に対する決裁者が経営者に近ければ近いほど有効だと思います。スタートアップのプレゼンは「提案するビジネスはこんなに魅力的です」「今こそ私に投資をしてください!」というメッセージを投資家に伝えるものですが、同様に提案を上司にするのは「私の提案はビジネスによい効果をもたらします」「私に提案を実行させて下さい」というメッセージを伝えるものだからです。
スタートアップのプレゼンテンプレートを私なりに応用したものがこちらです。
- 問題
- 提案する解決方法
- 費用対効果
- 実行戦略
- 他の解決方法
- なぜ提案する解決方法が良いのか
- 実行チーム
スタートアップのプレゼンでは「費用対効果」は「ビジネスモデル」で、「実行戦略」は「市場獲得戦略」、「他の解決方法」は「競合環境」、「なぜ提案する解決方法が良いのか」は「差別化要因」になります。
ここまでの内容が提案に盛り込まれていれば提案としてはOKではないでしょうか。この中で特に大切なのは「問題」「提案する解決方法」「費用対効果」だと私は思います。社内提案の話なので状況に応じて省略できる項目もあると思います。大企業で研究員をやっていた時は費用対効果の観点が抜け落ちていましたね~~(汗)。
慣れるまでは面倒なプロセスですが、ゆくゆく経営者になりたいと思う人にとっては良い練習になると思います。
【参考:投資家へのプレゼン方法】
お薦めTEDトーク5「VCへのプレゼン術」 - スタートアップであっぷあっぷブログ
2の「上司が動くボタンを押す」について。
これは上司が行動を起こす状況を作るということです。上司の行動原理を理解して、それに沿って提案を行うことで上司に行動を起こしてもらって提案を通して実行に移すということです。
私が経験した上司にはこのような人達がいました。
- 自分の上司に言われた事に対しては即座に行動する人
- 周囲の人に褒められたら嬉々として行動する人
- 「苦労したんです!」と感情的に訴えると行動してくれる人
- 「助けて下さい!」と頼ると行動してくれる人
- 他社事例があると安心して行動してくれる人
- 責任が発生しないことが確認できると行動してくれる人
このように上司が行動を起こしてくれる状況をよーーーーく観察しておいて、ここぞという時に行動を起こしてくれる方法をとりました。例えば「上司に言われた事に対しては即座に行動する人」に対しては、上司の上司に提案を持っていって味方になってもらうようにしました。「周囲の人に褒められたら嬉々として行動する人」に対しては、上司の周囲の人に提案を持っていって味方になってもらうようにしました。完全にゲーム感覚です!ゲームと同じで攻略方法を見つけるまで試行錯誤の連続です。ゲームだと思えば提案が却下されたときに腹を立てたり悲しくなったりしなくてすみますし、再挑戦する気力がなえません。あっ、このボタンを押したら爆発しちゃった!とか、おっこのボタンはなかなか有効だ!とか楽しいですよ。ゲーム化する(gamification)のはおすすめです!
このボタンを押すときに注意をするのは、上司にもメリットがあるような提案の仕方をする、ということです。部下の提案に乗ってみて良かったなぁと上司が感じてくれれば職場の雰囲気も良くなるし、次の提案もしやすくなります。自分ひとりの手柄にするのではなく、協力してくれた人達の手柄にするのはとても良い影響が出ると思います。自分自身にデメリットは一つもありません。より多くの人がハッピーになるような提案方法が望ましいです。
3の「人間関係を良好に保つように心がける」について。
これは言うまでもないことだと思います。と言いつつできないときはできない!ものですよね。私もできないときが少なからずあります。だって人間だもの。
なのでこれは人間関係をこじらせないように心がけるくらいしかできないようにも思います。人間関係がこじれるのはデメリットが大きいことを肝に銘じて人間関係を良好に保つように心がけることで、徐々に人間関係のこじれは減らせると思います(自分にも言い聞かせています)!
4の「時間を空けて再提案する」について。
提案者が知らないような社内事情で提案が却下されている場合は、その社内事情が明らかになってから再提案をするのが良いと思います。組織変更や人事異動があれば、新しい体制で提案をすれば良いし、会社の業績が悪い場合は、費用がかからない方法を選択すれば良いことになります。
自分自身の経験では、会社の業績が悪くて提案が却下されていたことがありました。この時は結局外部資金を調達することを計画に加えることで提案を認めてもらうことができました。この時は「会社からお金が出ていかないならいいや」という消極的な反応もありましたが、「そこまでしてやりたいなら応援するよ!」という予想外の前向きな反応が新たに出てきました。行動をおこしてみると周りの環境が変わっていく、というのを実感する良い経験になっています。
最後に
長々と書いてしまいましたが、提案内容のブラッシュアップは前提として必要だけど、その提案を通して実行に移すには結局人間関係が大切という内容です。私自身の経験では「上司が動くボタンを押す」のをゲーム感覚で楽しめるようになるとストレスも減るし提案も通りやすくなったので、上司に却下されてばかりでイライラしてしまう人にはとてもおすすめです。
今日は以上です。ありがとうございましたー!