スタートアップであっぷあっぷブログ

元研究者のスタートアップ経営者がスタートアップでの経験やキャリアについて発信するブログ。雰囲気ゴリラ似。

2019年の振り返り: 取締役の変更

いよいよ2019年も残りわずか。本当にあっという間に2019年が過ぎ去った気がする。でも改めて振り返ってみると2019年初頭の事柄はもう何年も前の出来事のように感じる。進展が大きかった証なのか、トラブルが多かった証なのか、充実していた証なのか、それとも単に記憶力が悪いせいなのか。。。

 

仕事について振り返ってみると「取締役の変更」と「取引先の変更」の二点が最も大きな出来事だと感じている。二つともヒトに関することだなぁ。心を砕くのはヒトとの関係性なのかも知れない。あーーーー胃が痛かった。

 

取締役の変更

 

これは以前にも記載したが大企業出身の方を取締役に迎えたらエライ目にあった出来事。私達の会社にはあまりにもフィットしなかった。他のメンバーを見ながら感じるのは彼が私達の会社にフィットしなかった点は「自分の専門外の領域に出て仕事をすること」と「迅速に決断を下し行動に移すこと」の二点だったのではないかと思う。

 

一つ目の「自分の専門外の領域に出て仕事をすること」についてはベンチャー企業特有の事情が関連している。ベンチャー企業は資金も人員も非常に限られているケースが多い(私達の会社だけかもしれないけど...)。あるプロジェクトを完遂しようとすると様々な専門性が必要になる。しかしながらベンチャー企業では人員に限りがあるため社内に全ての専門性を取りそろえるのはほぼ不可能な状態にある。そのような場合には社外から必要な専門性を調達しなくてはいけないが、社内でもある程度の知識が無ければ仕事の依頼や納品物の評価すらできない状態になる。従って社内の誰かが「自分の専門外の領域」の勉強をある程度はせざるを得ない(多くは走りながら考える状態)。また、社内の資金が不足していればそもそも社外に依頼する事もできず、社内のメンバーが勉強をしながらプロジェクトを進めざるを得ない。

 

先の大企業出身の元取締役の方はこの「自分の専門外の領域」に出る仕事をしたがらない人だった。豊富な社員数、多様な専門性を取りそろえる大企業であれば、この元取締役の方のような姿勢も許容されるのかも知れない。それぞれ専門性の高い人が対応した方が、全体として効率も良い。しかしながら資金も人員も限られた私達の会社のようなベンチャー企業では圧倒的に物足りず、プロジェクトを前進させるには効率が悪いと判断されてしまう。会社のサイズが小さくなると個人の守備範囲は広くなる。

 

二つ目の「迅速に決断を下し行動に移すこと」について。先の大企業出身の元取締役は、とにかく決めたがらない人、責任を取りたくない人だった。取締役がこの態度ではそもそも会社は動かなくなってしまう。「私は決められた業務を黙々とこなすことが大切だと思います」と彼は言っていた。耳を疑う発言だった。プロジェクトのゴールや会社のゴールをまず定め、そのゴールへのアプローチ方法を決め、実際にそれに従って仕事を進めていくことになるが、取締役がゴール設定やアプローチ方法を決めたくないと言っていたら誰も動けない。組織は止まる。従業員的な発想が強すぎたように思う。先の元取締役の方は、大企業では管理職ではあったものの取締役では無かったので、従業員的な考えにはなじみが無かったのかもしれない。

 

もう一つ。会社ではアウトプットの有無にかかわらず固定費(人件費など)は発生する。当然ながら短い時間で多くのアウトプットを出すことが望ましい。プロジェクトが遅延することの意味は、アウトプットが無い状態で固定費だけ発生してしまうことになる。つまり資金力の乏しい企業ではプロジェクト遅延は倒産に直結する大問題になる。なので間違った決断を下して行動してしまうのも、決断しなかったり行動しなかったりで時間を浪費するのは実は大差がない失敗を恐れて決断をしなかったり行動しないのは、ベンチャー企業ではそれは100%の確率で「失敗」になる。「失敗をしたくない」という考えが強すぎる人もベンチャー企業に向かないだろう。私も大企業での勤務経験があるが、私が勤めていた大企業は減点方式だった。自ら提案して、それが失敗すると、それは減点対象だった。提案するのはほぼ加点評価されていなかった気がする。だから自らは何も提案せず、上司の方針に従って黙々と仕事をこなす人が評価が高かったように感じていた。考えてみればこのような環境からベンチャー企業に移るとすぐには対応できないのも無理はないかも知れない。

 

いずれにせよベンチャー企業では、判断が必要なタイミングにおいて判断材料が不足するのは常なので、仮説を立てながら行動に移し続け状況を見ながら修正をし続けるしかない。仮説を立てて、その仮説を修正することは失敗ではない。必要なプロセスだ。そもそも仮説が最初から合っていると考えるのは傲慢だと思う。私は将来の事が全てわかっている、と言っているようなものだ。そんな人はこの世に存在していないと思う。仮説を高速に修正していく方が大切だと思う。

 

話は逸れるが、この仮説を立てて行動を起こし、結果を見つつ仮説を修正していくプロセスは研究のプロセスとそっくりだ。研究でも仮設を立てて、その検証方法を考え仮説の検証を行う、というプロセスの繰り返しになる。ゴールに近づく仮説の作り方や検証の仕方が研究者のセンスのように思う。これとベンチャーでのプロセスは似ている。

 

やめてもらうのも本当に大変だった。。。それはいつかまたの機会に。

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