なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 4「専門性の高い他社に業務を委託するから」
こんにちは~。
今日はなぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズの4回目「専門性の高い他社に業務を委託するから」についてお話をしたいと思います。
前々々回のブログに記載した内容をこちらにも再掲します。
- 開発が遅れると会社が潰れるから
- 小さな失敗が許容されるから
- 意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから
- 専門性の高い他社に業務を委託するから
- 社内ルールや行事が必要最小限だから
1-3の内容はこちらに記載しています。
4. 専門性の高い他社に業務を委託するから
まとめ
これまでに何度も述べてきた通りベンチャー企業ではメンバー数も資金も限られていることがほとんどではないでしょうか。私達の会社も10名程度のメンバーしかいないし、ベンチャーキャピタルから調達した資金も非常に最低限のものになっています。このような状態では、目標達成のための全ての専門性を自社内に揃えることは元々無理な状態にあります。従って必然的に目標達成のために経験のある他社に業務を委託することになります。
私達のような創業間もないベンチャー企業の場合、自社で全ての業務を完了できないという実態はあるものの、他社に業務を委託することの最大のメリットは専門性の高いプロに仕事をお願いできることにあります。自社内に経験やノウハウが無くても他社の知見を借りられてしまうのはとても素晴らしいことです。もちろん自社内で実施するよりも高い費用を一時的に支払うことになるが、自社内で専門家を雇い続けるよりも私達のベンチャー企業では断然良いです(プロに私達の会社を選んでもらう事がまず大変だし、採用できたとしても一つのプロジェクトしか走っていない私達の会社ではそのプロにずっと仕事をしてもらうほどのものが無いため雇用し続けるのが重荷になります)。また自社内にそのような専門性をゼロから蓄えるよりも他社の力を借りてしまった方が断然早いし質も高い場合が多くなります。
また高い専門性を持った人や会社は社外に複数の選択肢がある場合が多いため、私達に合った会社に仕事をお願いできる可能性が高くなります。そのような会社の中では当然リソース配分が最適化されていて、私達の会社の依頼に応えられる状況にある会社とそうでない会社とが存在します。タイミングもあります。ですので私達の会社の依頼に応えられる状況にある会社とだけ協議が進めることができるので効率が良いです。
私の経験上、この点は大企業でプロジェクトを進める場合とは状況が異なります。私の経験では大企業で新しいプロジェクトを進めようとする場合、そのプロジェクトを進めるために必要な業務を担当する部門にまず仕事をお願いすることになりました。大企業のマネジメントからすればこのように社内資源の有効利用を図ることは当然なプロセスです。
問題なのは、この大企業内の担当部門が競合他社と比較して競争力が無い場合です。このような場合でもその部門に業務を依頼しなくてはいけなくなる事がほとんどではないでしょうか。それは上司がその部門を使えと言うからかも知れませんし、人間関係がギスギスしてしまうことをさけるからかも知れません。
いずれにせよこうなるとなかなか業務のスピードも質も上がらなくなってしまいます。またその担当部門の競争力が高い場合でもエース級の人材に業務をお願いすることが難しかったりします。なぜならエース級人材は社内でひっぱりだこで儲けの大きな既存事業で重要な役割を果たしていることが多く、うまくいくかどうかも分からない新しいプロジェクト、つまり社内的に優先度の低いプロジェクト、にはなかなか時間を割いてもらえないからです。個人的にそのエース級人材と仲が良かったりすると仕事を受けてもらうこともできますが、いつでもそれが可能なわけではありません。
一方で、これは良い事ばかりではありません。他社に業務を委託する際にベンチャー企業が持っていなくてはいけない能力が2つあります。1つはプロジェクトマネジメント能力で、もう1つは他社の目利き力です。
プロジェクトマネジメント能力の説明については書籍や他のwebに詳しく記載されていいますが、大まかに言うとプロジェクト全体の中でどの業務を自社で、どの業務をA社で、どの業務をB社で、というように役割分担を行い、全ての業務の足並みをそろえて進めていく能力の事を指します。
他社に業務を委託する場合、役割分担や責任分担をきちんと行わなくては進められない大変さもあります。新しいプロジェクトで想定外の事柄が起き続けるようなプロジェクトで他社に業務を委託しつつ進めるのはそれなりに大変な事です。開発が進むにつれて当初の契約内容と変わってきてしまうことは往々にしてあります。それを前提にした契約内容にしておかなくてはいけないし、細かい費用負担について契約に書ききれないものもあります。また複数社に業務を委託していると、トラブルが発生した場合に責任の押し付け合いが始まります。ちなみに私達の会社ではこれらのいずれもよく経験しています(トホホ...)。
また他社に業務を委託する際に、その会社の目利き力も必要になる。その会社の実力が私達の期待するものなのかどうかということを限られた情報の中から判断していかなくてはいけません。物凄く慎重に考えて「できると思いますが、できない可能性もあります」と回答する会社もあれば、何でもかんでも「できます、できます」と軽く回答する会社もあります。各社で言葉の指す内容やレベル感がバラバラな中で手探りで探すことになります。
何でも「できます、できます」という会社で、蓋を開けてみたら全く実力が伴わずできなかった、という事も実際にあります!私はこのような会社に重要な業務を委託してしまって痛い目にあったことがあります。この時に経営者が判断を誤ると会社が一気に傾くという教訓をかなり痛い思いをしながら得ました。
このように専門性の高い他社に業務を委託することで開発速度は上げられますが、そのために自社で持っているべき能力もあるというお話でした。大企業ではこれまで自社内のリソースを使って開発を行う事が多かったと思いますが、世の中から求められる製品が大きくかつ早く移り変わっていく時代にあっては、大企業内でもプロジェクトマネジメント能力を高め、社外の力を上手に使っていくことが開発速度という観点では必要になると考えています。社外に業務を委託する場合、ノウハウの蓄積がとか、自社の秘密事項が流出するとか、費用対効果が悪い、とかいろんな意見が出るだろうが、それに対する意見もいつか別の機会に述べてみたいと思います。
次回は「社内ルールや行事が必要最小限だから」について書きたいと思います。
今日は以上です。ありがとうございましたー。
【なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズ】