スタートアップであっぷあっぷブログ

元研究者のスタートアップ経営者がスタートアップでの経験やキャリアについて発信するブログ。雰囲気ゴリラ似。

製造系スタートアップは大企業に勝てないのか

こんにちはー。製造系スタートアップを創業し、あっぷあっぷしながらなんとかやっているゴリです。

 

「製造系のスタートアップは大きな設備投資などが難しいので大企業に勝てないんじゃないですか?」

 

これはある工学系の大学院生からうけた質問です。こんな質問ができる大学院生がいるんだ~!と感心してしまいました。とても良い質問ですね!

 

みなさんはどう思いますか?

 

たしかに製造設備や検査装置に投資を行うことで製造原価を下げることができますよね。そしてそのような投資ができる企業、つまり大企業が有利な気がします。うん、うん、私もそうだと思います!!

 

。。。「ではなぜあなたは製造系スタートアップをしているのですか?」という声が聞こえてきそうです。やっていることと言っていることがちぐはぐだと思いますよねー。

 

では製造系スタートアップには本当に勝ち目が無いのでしょうか?という話を今日はしたいと思います。

 

結論から言うと競合しないようにすみわけができるです。

 

目次

 

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大企業にも苦手なことがある

大企業には人もモノもお金もそろっていてなんでもできてしまいそうに思いませんか?私も大企業で働く前はそのように思っていました。だから若かりし頃の私は大企業で製品開発をすれば新しい製品を次々に世の中に提供できると心から信じて大学から大企業に移りました。

 

ところが!あれこれ色んな方法を試しながら研究開発でいくらがんばってもまーーーったく製品につながらないという暗黒の時代を経験したのです。

 

「あれっ?これは何かがおかしい」「このままここで研究開発を続けても製品につながる気がしない」と感じるようになりました。悶々としてつらかったですねー。

 

そうこうしているうちにラッキーなことにシリコンバレーで働かないかという打診を受けました。もう即答でその話をうけました!シリコンバレーは様々な新しいビジネスが産まれる地域なので、そこでこれまでの自分に何が足りないのかを知りたい一心でシリコンバレー行きを決意しました。

 

数年間のシリコンバレーでの勤務で学んだのは一言でいうと「大企業は守るものが多くてリスクがとりにくい」ということでした。「守るもの」とは株主からの信頼、ブランド、既存ビジネス、既存顧客からの信頼、伝統などです。

 

日本やアメリカといった国の特性というよりも会社の大きさや歴史が大きく関係しているように感じましたし、今でもそのように考えています。実際に日本とアメリカでそれぞれ大企業で働いた経験がありますがどちらも保守的な感じがとーーーーーっても似ていました!そっくりでした!デジャヴか?と思うほどでした。

 

会社ごとにそれぞれいろんな理由があると思いますが、大企業から新しいビジネスが産まれにくくなってしまうのは「イノベーションのジレンマ」にとらわれてしまいがちなことも大きな要因ではないかと思います。


 

 

一方でスタートアップは大企業と比較するとリスクがとりやすい状態にあります。スタートアップはまだ守るべきものが無いですからね~~。良くも悪くも何もない!しがらみが無くて身軽なのはスタートアップの少ない利点の一つですねー。

 

私の独断と偏見で大企業とスタートアップの得意なことと苦手なことを分類してみました。次の表をご覧ください。

 

  得意 苦手
大企業 ・高品質な製造
・大規模投資による原価低減
・既存製品を改良すること
・新規開発を行うこと
臨機応変な対応
・リスクをとること
スタートアップ ・新規開発を行うこと
臨機応変な対応
・大規模投資による原価低減

 

大企業が苦手なことをやる

上に書いた通り大企業は「新規開発を行うこと」「臨機応変な対応」「リスクをとること」が苦手な場合が多いです

 

一方でスタートアップは「新規開発を行うこと」「臨機応変な対応」がやりやすい環境にあります。つまりスタートアップは臨機応変な対応が可能なので新規開発を効率的に進められます。

 

ここまで書くと明らかなようにスタートアップは大企業が苦手な新規開発を行うことが有効な戦略になります。

 

これは私自身の経験から強く感じていることです。私自身は大企業で新しいビジネスや開発を産みだすことにずっと挑戦したもののとーーっても難しくてうまくいかなかったのでスタートアップを始めました。実際に大企業とスタートアップの両方を経験してみると開発スピードや開発のしやすさは断然スタートアップの方が良いです。

 

【関連する過去のエントリー】

なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1「開発が遅れると会社が潰れるから」 - スタートアップであっぷあっぷブログ

 

すみわける

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スタートアップは新規開発をするのが良いのは分かったけど、開発が終わったら製造や販売になるから商売の段階になったら大企業に負けちゃうよね?と思う方もいらっしゃると思います。

 

はい、その通りです!大企業と真正面から競合する状態になってしまったらスタートアップは負けてしまいます。そのような状態は避けたいところですねーー。

 

それではどうするか?

 

新規開発が終わった段階でスタートアップを大企業に売却するというのが戦略になるのではないでしょうか。新規開発はスタートアップが行い、製造や販売は大企業が行うという役割分担です。こうすることで競合することなくお互いが得意な役割を果たすことができます。私達のスタートアップが目指しているのはこちらの方法です。

 

と言ってもこれは私達のオリジナルな考え方ではなくてアメリカでは数多くなされている方法です。アメリカではスタートアップの買収で新規ビジネスを獲得する大企業が数多くあります。すでに有効性が実証されている戦略です。

 

大企業で新規開発をゼロからてがけるよりもその会社の戦略と一致するスタートアップを買う方が効率が良いと考えられています。新規開発には失敗リスクがつきものです。せっかく時間、お金、人員を投資したのに事業化ができないという経験からそのように考えるようになったと見受けられます。日本でもこれからこういうケースが増えていくのではないでしょうか。

 

以前のエントリーで書きましたがスタートアップで新規開発するモノについては必ずしも真新しいモノでなくても良いと思います。大企業の中には「他社と類似製品をポートフォリオの一つとして持っていたいモノ」があります。これも大企業にとっては新規開発にあたるので大企業にとっては難しかったりします。ですのでこのようなモノをスタートアップが開発して大企業に買収してもらうという方法もありだと考えています、というか私達のスタートアップはそのようにしています(うまくいっても失敗しても報告します)。

 

【関連する過去のエントリー】

中リスク中リターンなスタートアップの戦略でもいいんじゃない? - スタートアップであっぷあっぷブログ

 

最後に

今回は大学院生からうけた質問に対する私の回答をエントリーしてみました。スタートアップの出口(Exit)戦略としては新規株式公開(IPO)が注目を集めますが、合併・買収(M&A)を戦略に取り入れればスタートアップが取れる戦略も増えます

 

製造系スタートアップも開発が成功した段階で大企業に売却するというのは取り得る戦略の一つという話でした

 

今回のエントリーを書いているうちに「製造系スタートアップ」というよりは「開発系スタートアップ」と言った方が良いような気がしてきました。。。

 

今日は以上です。ありがとうございましたー。