転職時のリファレンスチェックで確認されたこと(シリコンバレーベンチャー企業の場合)
こんにちはー。製造系スタートアップを創業し、あっぷあっぷしながらなんとかやっているゴリです。
突然ですが「リファレンスチェック」って聞いたことがありますか?
転職を考えたことのある方は聞いたことがあるかも知れません。企業が新たに人を採用する際に採用候補者の元上司や元同僚にお話を聞くことを「リファレンスチェック (reference check)」と言います。ちなみにお話を聞かれる元上司や元同僚を「リファレンス (reference)」と言います。アメリカの会社や組織に就職しようとしたことがある方は恐らく経験があるのではないでしょうか。
日本ではあまりなじみがないものかも知れませんが、アメリカのように転職が当たり前の時代がくれば今後日本でも「リファレンスチェック」が行われるようになるのではないかと私は考えています。そんなときの参考になったら嬉しいです!
今日はゴリがリファレンスとしてシリコンバレーベンチャー企業のインタビューを受けたときのお話をしたいと思います!
確認されたことを先に言ってしまうとこちらです。
- ゴリは候補者をどのように評価しているか
- 候補者の強みは何か
- 先方の企業が求めている役割を候補者が果たせると思うか
目次
リファレンスチェックの目的
リファレンスチェックは採用候補者本人への面接ではわからないことを確認することが目的です。面接しただけではその人のことがわからないですからねーーー。少なくとも私には見抜けません(断言)!
例えば「採用候補者と一緒に働いた人達は候補者をどのように評価しているのか」、
「どのような人がリファレンスチェックに応じてくれるのか(職場で良好な人間関係を築ける人かどうか)」などの確認になります。採用する企業としてはトラブルメーカーになりそうな人は避けたいですからね~。なるべく色んな角度から候補者を知りたいということですね。
転職を本気で考えているときは「どうせ会社をやめるんだから手抜きをしておこう」とか「どうせ会社をやめるんだから不満をぶちまけちゃえ」という気持ちになるのはよーーーくわかります。 が!本当にそれをやってしまうとリファレンスチェックがある場合、それで引っかかってしまう場合があるので要注意です。やっぱりいろんな人に見られていますからね。
あとリファレンスチェックがあるということで候補者はウソがつくにくくなるという効果もあると思います。面接のときに自分の成果を強調しようとして盛りたくなりますが、特盛りはバレちゃいますねーーー。面接では中盛りくらいにしておきましょう。
採用プロセスの流れ
今回はアメリカの大企業で一緒に働いていた元同僚がシリコンバレーのベンチャー企業に転職しようとしていたのですが、その採用プロセスはこのような感じでした。
- 元同僚が経歴を「LikedIn」*1に登録する
- 「LinkedIn」に掲載されていた企業の求人情報に元同僚が応募する
- その企業が「LinkedIn」に掲載されている元同僚の経歴を確認し、基準をクリアしていたためwebインタビューにすすむ
- webインタビューでは企業側と元同僚側のそれぞれの希望が折り合うかどうかを確認する
- 元同僚が「リファレンス」を 2,3 名提示する(そのうちの一人がゴリ)
- 企業が「リファレンス」にインタビューする
- 企業と採用候補者とで最終面接を行って採用か不採用かが決まる
今回はアメリカ企業に就職する場合なのでLinkedInが起点になっています。アメリカ企業への転職活動にLinkedInは必須と言っていいのではないでしょうか。採用担当者もLinkedInを必ずチェックしているはずです。
日本で転職をするからLinkedInは関係ないと思われるかも知れませんが、外資系企業は日本での採用活動でもLinkedInを使いますし、ヘッドハンターもLinkedInをサーチしています。ですので日本であってもLinkedInはキャリアアップには欠かせないツールだと思います。LinkedIn、おすすめですーーー。
ゴリ自身が外資系企業に転職したときもLinkedInでのつながりがきっかけになりましたねーー(遠い目)。最近はもっぱら取引先の担当者について知るために使っています。
日本だと名刺管理アプリの「Eight」がLinkedInに近い使われ方がされているのでしょうか(根拠なし)。私は名刺管理のためにEightを使っていますが、だんだんLinkedInに近づいているように感じます。意識してるのかな、、。
リファレンスチェックで確認されること
いよいよ本題です。ゴリがリファレンスチェックで聞かれたことを書きたいと思います!
今回のインタビューは電話でした。インタビューは約15分で電話のお相手は元同僚の未来の上司にあたる人でした。ざっくりというと以下の流れです。
- 先方から今回のインタビューが採用プロセスの一環である旨の説明
- ゴリからの自己紹介と候補者(元同僚)との関係の説明
- 先方からゴリへの質問
1ではインタビューの目的をきちんと説明してくれました。特にどういうポジションでの採用過程なのかということを詳しめに説明してくれました。もともと元同僚からしっかりと事前説明をうけていたので特に驚くこともなくすぎました。元同僚さん、ありがとう~~!
そして2ではゴリが自己紹介をするのですが、そのなかで意識して次のことを説明しました。
候補者(元同僚)とゴリが
- いつからいつまで
- どこで
- お互いにどのような立場で
- どのようなプロジェクトに関して
一緒に仕事をしていたのか。
これらの説明はゴリがリファレンスチェックに協力する場合には最初に必ずおこないます。なぜならこれらのことを先方に最初に伝えることでゴリがどんな視点から発言するのかということを先方に理解してもらえるからです。例えば同じ部署内のチームメイトの視点なのか、直属の上司からの視点なのか、他部署のメンバーからの視点なのかなどです。
3「先方からゴリへの質問」では具体的には次の質問がありました。
- ゴリは候補者(元同僚)をどのように見ているのか(評価しているか)
- 候補者(元同僚)の強みは何か
- 先方の企業が求めている役割を候補者(元同僚)が果たせると思うか
1「ゴリは候補者(元同僚)をどのようにみているのか」についてはYes/Noでこたえられない「オープンクエスチョン」形式の質問でした。
先方がこういう質問をするときは、ゴリからみた候補者(元同僚)の最も印象的な特徴を聞きたいという気持ちが背景にあります。
今回私は「候補者(元同僚)は複雑な状況でも状況を整理した上で順序だてて仕事が進められるチームワーカー」、「チーム内で足りていない役割を素早く見つけ出し、その役割をこなせてしまう器用な人」という内容で答えました。なぜそのように評価するのかという具体的なエピソードもそえて。
ちなみに「他の人ではうまくいかなかったのにこの人だとうまくいった」というストーリーでお話をしてあげるとより素晴らしい印象を与えることができます(小声)。
2「候補者(元同僚)の強みは何か」については候補者(元同僚)の強みが企業の方向性と一致するかどうかを確認するためだったり、他の候補者と比較するときの判断材料にするためだったのではないかと思います。
ここでは1とかぶる部分がありましたので、追加して候補者(元同僚)の強みを紹介しておきました。「複数の部署にまたがったチームであったり、文化背景の異なるインターナショナルなチームであってもメンバーをまとめて成果を出せる」ということを答えました。
先方の反応からするとこの回答はヒットしたらしい(、、、たぶん)。多様性が重要とはよく言われますが、実際に多様性のあるチームで仕事をするのは大変だし誰でもできるわけではないですからね。文化的背景や専門性などが異なると共通理解を持つことのハードルはとても高いです。前提となる知識や認識を共有するのに一苦労します。同じ言葉であっても、例えばアメリカ人のいう「わかった」、インド人のいう「わかった」、日本人のいう「わかった」が違うことがままありますしね。あとグローバルチームだと時差は地味~にきついです。歳をとってくると特に。ヨーロッパ、アメリカ、アジアのメンバーが参加するweb会議だとどこかは深夜ですからね。。。
3「先方の企業が求めている役割を候補者(元同僚)が果たせると思うか」については、ベンチャー企業を経営しているゴリから見て候補者(元同僚)がきちんと役割を果たせるかどうかを聞きたかったのだと思います。大企業とベンチャー企業とでは求められる資質やメンタリティーが違いますからね。シリコンバレーといえど大企業出身者を雇ってガッカリしてしまうのはベンチャー企業あるあるです。
今回は「候補者(元同僚)は今まで大企業で働いていたから計画を実行に移す機会に恵まれてこなかったのはその通り。候補者(元同僚)はそういう状況に危機感を覚えてMBAをとるという行動をおこした。だから貴社で実行、実行、とにかく実行しまくる機会を求めている。候補者(元同僚)は貴社で活躍できる準備ができていると思う。」と答えました。本当は経験があるとベストでしたが挑戦的なポジションへの転職だったので「準備はできてると思うよ」という回答になりました。
これで一通りインタビューは終わり少し雑談を交わして電話を切りました。やりきりましたーーー。
あとは元同僚の幸運を祈るばかり。Fingers crossed!
さいごに
いかがでしたでしょうか。採用候補者のことを色んな角度から知るためにこんな労力をかけるのですね~~。やっぱりみなさん良い人間関係で気持ち良く働きたいですものね。
いずれにせよ誠実に良い人間関係を築いておくというのは大切ですね!同じ業界内での転職だと遅かれ早かれ人のうわさは広まっていくので、どこかの職場でめちゃくちゃなことをしてしまうのはやっぱり損だと思います。目に見えない「トラックレコード」が残ります。
今日は以上です。ありがとうございましたー。
【おまけ】
日本人の方から転職について意見を聞かれたときに必ずお薦めしているのは次の2冊です。会社に自分のキャリアを握られてしまうのではなく、自分でキャリアを作っていきましょうというお話です。同じ能力があっても似たような仕事をしても活躍する場所や立場で得られる報酬も自由も変わってしまいます。自分のキャリアのオーナーシップは超重要です!
|
|
【祝】会社の売却完了ーー!
こんにちはー。製造系スタートアップを創業し、あっぷあっぷしながらなんとかやっているゴリです。2021年もあっと言う間に終わってしまいそうですねー。そんな今日はご報告があります!
なんと!!数年前に創業した会社の売却が完了しましたーー!パチパチパチ…。今回は外国企業が買ってくれましたー。ゼロから育ててきた会社を買ってもらえるなんて本当に感無量です。私達がやってきたことを評価をしてくれる人達がいた事が何より嬉しいです。
ベンチャーキャピタルから投資を受けたスタートアップ企業としては吸収合併(M&A)という出口(Exit)まで無事にたどり着けたのでとにかくホッとしています。はあぁーーよかった。それなりの金額の投資を頂いていたのでプレッシャーも半端なかったですが、期待に応えられてとにもかくにもホッとしています。ながーーーい孤独との戦いから抜け出せました。
人生で初めての会社売却ですが、買い手を探し始めてから売却完了までトータルで実に約10か月もかかりました。長かった〜。もともと私の会社は設立当初からM&Aされることを目標にしてきたので望んでいた結果ではありますが想像以上に大変でした。
この約10か月間、本当に人間不信になるような駆け引きが休む間もなく展開されました。誰も本当の事を言わないし、お金がかかると欲望むき出しになる人はいるし、、、。利害の衝突ばかりでしたからね。まさに強風の中を綱渡りするような危うい状況が続きましたが、それを乗り越えて売却までなんとかたどり着きました!めでたしめでたし。これでようやく夜中や休日に電話がかかってくる事もなくなり平和が訪れそうです。
しばらくは会社の売却はしたくないです、、。もうおなかいっぱい。
そして今回の売却先は外国企業だったので、新型コロナウイルス蔓延のせいで一度も対面せず売却完了。奇跡的!!よく買ってくれたなぁー。感謝感謝。オンラインミーティング、メールでの情報交換とサンプルの輸出だけで完了できました。この時代ならではですね。
会社の売却先を探し始めた当初はいくつかの日本企業も買収に名乗りを挙げてくれたけど、決断の速さと買収価格の点で最終的には外国企業だけが候補に残りました。日本企業を選ぶに選べなかった寂しさは正直ありますが、活躍の場が海外に広がるのは嬉しいです!
それにしても海外市場が視野に入ると企業価値って上がるんですねー。海外市場に販路がある会社さんは買収金額が高くても大丈夫そうでした。将来的に大きな利益が見込めるほど買収金額は高くても大丈夫なので、対象市場が広い会社さんの方が企業買収にかけられるお金は大きくなりますね。考えてみたら当たり前なのですが、今回の会社売却の過程で実感をもって理解できました。
私達の会社の場合、海外でも売れる製品を開発した事、英語で仕事ができる事、海外に知り合いがいる事は今回の会社売却では有利でしたね。何がどうつながるのか世の中わからないものですねー。しみじみ。
とにかく今回はいろいろと運が良かったなぁーー。二度は同じことが起きない気がします。結局は運が決め手だったなぁ。
ちなみにアメリカではベンチャーキャピタルから資金を調達したスタートアップのExitでIPOとM&Aの比率は1:9でM&Aの方が圧倒的に多いです。日本とはちょうど逆になる感じですね。日本ではIPOの方が圧倒的に多いです。
[引用文献]
大企業とベンチャー企業の経営統合の在り方に係る調査研究(三菱総合研究所, 2019年3月)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000123.pdf
備忘も兼ねて会社売却の過程についても近々エントリーを書いてみたいと思います。
今日は以上です。ありがとうございましたー。
製造系スタートアップは大企業に勝てないのか
こんにちはー。製造系スタートアップを創業し、あっぷあっぷしながらなんとかやっているゴリです。
「製造系のスタートアップは大きな設備投資などが難しいので大企業に勝てないんじゃないですか?」
これはある工学系の大学院生からうけた質問です。こんな質問ができる大学院生がいるんだ~!と感心してしまいました。とても良い質問ですね!
みなさんはどう思いますか?
たしかに製造設備や検査装置に投資を行うことで製造原価を下げることができますよね。そしてそのような投資ができる企業、つまり大企業が有利な気がします。うん、うん、私もそうだと思います!!
。。。「ではなぜあなたは製造系スタートアップをしているのですか?」という声が聞こえてきそうです。やっていることと言っていることがちぐはぐだと思いますよねー。
では製造系スタートアップには本当に勝ち目が無いのでしょうか?という話を今日はしたいと思います。
結論から言うと競合しないようにすみわけができるです。
目次
大企業にも苦手なことがある
大企業には人もモノもお金もそろっていてなんでもできてしまいそうに思いませんか?私も大企業で働く前はそのように思っていました。だから若かりし頃の私は大企業で製品開発をすれば新しい製品を次々に世の中に提供できると心から信じて大学から大企業に移りました。
ところが!あれこれ色んな方法を試しながら研究開発でいくらがんばってもまーーーったく製品につながらないという暗黒の時代を経験したのです。
「あれっ?これは何かがおかしい」「このままここで研究開発を続けても製品につながる気がしない」と感じるようになりました。悶々としてつらかったですねー。
そうこうしているうちにラッキーなことにシリコンバレーで働かないかという打診を受けました。もう即答でその話をうけました!シリコンバレーは様々な新しいビジネスが産まれる地域なので、そこでこれまでの自分に何が足りないのかを知りたい一心でシリコンバレー行きを決意しました。
数年間のシリコンバレーでの勤務で学んだのは一言でいうと「大企業は守るものが多くてリスクがとりにくい」ということでした。「守るもの」とは株主からの信頼、ブランド、既存ビジネス、既存顧客からの信頼、伝統などです。
日本やアメリカといった国の特性というよりも会社の大きさや歴史が大きく関係しているように感じましたし、今でもそのように考えています。実際に日本とアメリカでそれぞれ大企業で働いた経験がありますがどちらも保守的な感じがとーーーーーっても似ていました!そっくりでした!デジャヴか?と思うほどでした。
会社ごとにそれぞれいろんな理由があると思いますが、大企業から新しいビジネスが産まれにくくなってしまうのは「イノベーションのジレンマ」にとらわれてしまいがちなことも大きな要因ではないかと思います。
|
一方でスタートアップは大企業と比較するとリスクがとりやすい状態にあります。スタートアップはまだ守るべきものが無いですからね~~。良くも悪くも何もない!しがらみが無くて身軽なのはスタートアップの少ない利点の一つですねー。
私の独断と偏見で大企業とスタートアップの得意なことと苦手なことを分類してみました。次の表をご覧ください。
得意 | 苦手 | |
---|---|---|
大企業 | ・高品質な製造 ・大規模投資による原価低減 ・既存製品を改良すること |
・新規開発を行うこと ・臨機応変な対応 ・リスクをとること |
スタートアップ | ・新規開発を行うこと ・臨機応変な対応 |
・大規模投資による原価低減 |
大企業が苦手なことをやる
上に書いた通り大企業は「新規開発を行うこと」「臨機応変な対応」「リスクをとること」が苦手な場合が多いです。
一方でスタートアップは「新規開発を行うこと」「臨機応変な対応」がやりやすい環境にあります。つまりスタートアップは臨機応変な対応が可能なので新規開発を効率的に進められます。
ここまで書くと明らかなようにスタートアップは大企業が苦手な新規開発を行うことが有効な戦略になります。
これは私自身の経験から強く感じていることです。私自身は大企業で新しいビジネスや開発を産みだすことにずっと挑戦したもののとーーっても難しくてうまくいかなかったのでスタートアップを始めました。実際に大企業とスタートアップの両方を経験してみると開発スピードや開発のしやすさは断然スタートアップの方が良いです。
【関連する過去のエントリー】
なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1「開発が遅れると会社が潰れるから」 - スタートアップであっぷあっぷブログ
すみわける
スタートアップは新規開発をするのが良いのは分かったけど、開発が終わったら製造や販売になるから商売の段階になったら大企業に負けちゃうよね?と思う方もいらっしゃると思います。
はい、その通りです!大企業と真正面から競合する状態になってしまったらスタートアップは負けてしまいます。そのような状態は避けたいところですねーー。
それではどうするか?
新規開発が終わった段階でスタートアップを大企業に売却するというのが戦略になるのではないでしょうか。新規開発はスタートアップが行い、製造や販売は大企業が行うという役割分担です。こうすることで競合することなくお互いが得意な役割を果たすことができます。私達のスタートアップが目指しているのはこちらの方法です。
と言ってもこれは私達のオリジナルな考え方ではなくてアメリカでは数多くなされている方法です。アメリカではスタートアップの買収で新規ビジネスを獲得する大企業が数多くあります。すでに有効性が実証されている戦略です。
大企業で新規開発をゼロからてがけるよりもその会社の戦略と一致するスタートアップを買う方が効率が良いと考えられています。新規開発には失敗リスクがつきものです。せっかく時間、お金、人員を投資したのに事業化ができないという経験からそのように考えるようになったと見受けられます。日本でもこれからこういうケースが増えていくのではないでしょうか。
以前のエントリーで書きましたがスタートアップで新規開発するモノについては必ずしも真新しいモノでなくても良いと思います。大企業の中には「他社と類似製品をポートフォリオの一つとして持っていたいモノ」があります。これも大企業にとっては新規開発にあたるので大企業にとっては難しかったりします。ですのでこのようなモノをスタートアップが開発して大企業に買収してもらうという方法もありだと考えています、というか私達のスタートアップはそのようにしています(うまくいっても失敗しても報告します)。
【関連する過去のエントリー】
中リスク中リターンなスタートアップの戦略でもいいんじゃない? - スタートアップであっぷあっぷブログ
最後に
今回は大学院生からうけた質問に対する私の回答をエントリーしてみました。スタートアップの出口(Exit)戦略としては新規株式公開(IPO)が注目を集めますが、合併・買収(M&A)を戦略に取り入れればスタートアップが取れる戦略も増えます。
製造系スタートアップも開発が成功した段階で大企業に売却するというのは取り得る戦略の一つという話でした。
今回のエントリーを書いているうちに「製造系スタートアップ」というよりは「開発系スタートアップ」と言った方が良いような気がしてきました。。。
今日は以上です。ありがとうございましたー。
社長が遊び歩く理由
こんにちはー。製造系スタートアップを創業し、あっぷあっぷしながらなんとかやっているゴリです。今日は社長が経費を使ってフラフラ遊び歩いているように見えることについて書いてみたいと思いまーす。
「社長はまた会社のお金使って遊び歩いてる!」とか「社長は経費で美味しいものばかり食べてていいなぁ」などと思ったことはありませんか?私はたくさんありますね~。従業員の自分達は汗水たらして働いているのに社長はいいなぁって思っていました!ずるいなーーって思っていました。
でも自分で経験してみて実感するのは社長が遊び歩く事には意味があるです。自己正当化ではないですよ!...たぶん。
社長が"遊び歩く"ことにどんな意味がある?
では"遊び"にどんな意味があるのでしょうか。私はこちらのように思います。
- 人脈を広げているもしくは維持している
- 信頼できそうな人かどうかを探る
- ビジネスに繋がる種を探す
- などなど
なんだかんだ言って経営者同士で信頼しあえることは仕事を進めていく上でとても大切です。なぜならトラブルが起きた時にどちらかの会社が損失に目をつぶらなくてはいけない場面がありがちで、それは現場での判断が難しく経営判断になるからです。同じゴールをみてもらえる経営者と仕事をするのはとても大切です。
しかもプロジェクトを進めていればほぼ必ずトラブルは発生しますしね(えっ?僕の会社だけですって?そんなはずはないと思います!)。
逆に経営者同士で馬が合わないとトラブルがあった時に責任の押し付け合いになってもめますねーーー(実感ありあり)。本当に仕事が進まなくなります。会社対会社の関係も結局は人間関係なんだな~と感じています。
このような経営者との良好な「人脈」を維持するためにも仕事以外の時間を一緒に過ごすことは有効です。それによってお互いの考え方、興味や近況が分かるからです。私はより理解が深まるように感じています。
また社外の人達と"遊ぶ"ことで新しい知り合いも増えますよね。一緒に"遊ぶ"ことでお互いをよく知ることが可能になるので、信頼できそうな人かそうでないか、考え方が合いそうかそうでなさそうかという事をそれとなく判断してしまいますね~(気が抜けないですね!)。自分の会社で働いてもらいたい人を探す場合にもこのようにしたいくらいです。
会社員で言えば、会社の人達と他愛のない話をしながら信頼できる社内人脈を広げることと似ているのではないでしょうか。昔あったタバコ部屋人脈とか。同期のネットワークなんていうのも良い人脈ですよね(←うらやましいです)。
また気楽な雑談の中から新しいアイデアが産まれることもよくありますしね。
"遊び"歩かなかったために困ったこと
私は仕事と称して"遊び歩く"ことに嫌悪感に近いくらいのアレルギー反応を持っていたので何年かは遊び歩くことはしませんでした。お金と時間がもったいないですしね。無駄としか感じていませんでした。
しばらくはそれで問題無かったのですが、コロナウイルス蔓延のような想定外なことが起きて環境が大きく変わってしまいました。それでプロジェクトの方向転換をせざるを得なかったのですが、新たな体制を構築しなくてはいけないものの土地勘がなく頼れる人がなく右往左往してしまいました。
会社がつぶれてしまうかもしれないと2か月ほど本気で覚悟しましたが、最終的には良く面倒を見てくれている社長さんの人脈をつたって事なきを得ることができました!まさに九死に一生を得る経験でした。(「会社がつぶれそう」だなんて社員に言えないし苦しかったな~)
そこで人のつながりのありがたさ、人のつながりのない危うさを痛感しました。
振り返ってみると面倒見の良い社長さんはことあるごとに私を食事に誘ってくれていました。その社長さんは他の人達ともよく"交流"をしているようでした。人のつながりを得る手段の一つが"遊び歩く"ことだったんですねーーー。なるほどーー!勉強になりました。
これはほんの一例ですが、最近になってようやく社長(代表)が"遊び歩く"ことの大切さを理解するようになってきたように思います!
いや~~社長さんは会社のお金でただ遊びほうけているだけでは無かったのですね~。世の中の社長さん、勘違いしていてすみませんでした!本気で遊んでるだけだと思っていました。
最後に
ということで今日は社長が遊び歩くのは信頼できる人脈の拡大と維持のためというお話でした。社長の遊び歩きはやっぱりお仕事に関係するのですね(例外もあります)。人とのつながりって大切ですねーー。
仕事と称して遊び歩きすぎて会社や家庭にいないとそれはそれで問題になるのでバランスには要注意です!(完全に自戒)
今日は以上です。ありがとうございましたー。
【追記 2021/11/15】
先日会社経営をしている同級生にあってお話をしたらその彼も飲み会で仕事を広げていることをやっているけれど、個人的なお遊びも結構しているようでした。。。人それぞれですね。
MIT博士号取得者のお給料事情【2020年版】
こんにちはー。製造系スタートアップを創業し、あっぷあっぷしながらなんとかやっているゴリです。今年も大学院の講義でキャリアのお話をすることになったのでその準備を始めました(毎回直前の準備です...)。
昨年の講義で学生の食いつきが最も良かったのが、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号(PhD)を取得した卒業生達のお給料情報でした。お金のことはやっぱり気になりますよね~~。という事で今年も最新情報を調べてみました。
MITのホームページがリニューアルされていて分類が変わっていますがこちらです!
専攻別
引用元(MIT Career Advising & Professional Development)
Doctoral Outcomes and Salaries | MIT Career Advising & Professional Development
専攻別で見ると昨年と傾向は似ていて中央値で高額な順で経営(Management) 約2,600万円、経済 (Economics) 約2,000万円、オペレーションズリサーチ (Operations Research) 約1,700万円、電気電子コンピュータサイエンス (EECS) 約1,700万円と続きます(1ドル=110円換算)。 1年目でこれはすごいですね!
いわゆるSTEM (Science, Technology, Engineering, Mathematics) 系だとコンピュータサイエンスが約1700万円でやはり高額ですね~~。いいなぁ~。ため息が止まりません。
専攻別で結構開きがありますね。これから大学院の専攻を決める学生さんは専攻によってこのような傾向があることは知っていて損は無いのではないでしょうか。もちろんお金が全てでは無く自分の興味に従って進路を決めるのは良い事だと思いますが(私は何も考えずにそうしていました)、このような傾向を知らずに選ぶのと知って選ぶのとでは覚悟が変わると思います。
職種別
引用元(MIT Career Advising & Professional Development)
Doctoral Outcomes and Salaries | MIT Career Advising & Professional Development
職種別で見てみると中央値で高額な順でいうと経営 (Management) 約1,800万円、コンピュータと数学 (Computer & Mathematics) 約1,700万円になります(1ドル=110円換算)。経営者の収入(役員報酬でしょうか)はやはり高いですね。「コンピュータと数学」はよく分かりませんがIT系企業か金融系ですかね。。。
業種別
引用元(MIT Career Advising & Professional Development)
Doctoral Outcomes and Salaries | MIT Career Advising & Professional Development
やはり金融と保険が一番給料が高く約1,900万円です。次に高いのは技術で約1,700万円です。「技術」だと幅広過ぎて正直何を指しているのか分かりませんが。。。逆に教育(大学教員?)と製造は低いです。教育は約1,300万円、製造は約1,200万円でした(1ドル=110円換算)。
働く業界によって給料が大きく違いますね!
私自身は学生の頃に就職する業界で給料水準が違うなんて考えたことがありませんでした。でも今となっては業界選びはとても大切だなぁと強く感じます。給料の高い業界は成長しているもしくは高利益率である可能性が高いと思うからです。そういう業界での経験はキャリアにとってプラスになります。できるのであれば学生時代の自分にも教えてあげたいです。
最後に
MIT博士号取得者のお給料事情はやっぱりすごかったですね。1年目とは思えないですね~。日本とはだいぶ状況が異なりますね。
ということで講義に参加してくれる大学院生に向けては、給料面からは
- 日本国外に出ても活躍できる人を目指しましょう(待遇の良い国で働ける)
- 業界は選びましょう
ということをお伝えしようと思います。大学の先生に「そんなこと教えるな」って怒られるかな。。。
今日は以上です。ありがとうございましたー。
MITの学部生と修士学生の給料情報はこちらです。ご興味ある方はどうぞ。
関連するエントリー
読書メモ「『心がボロボロ』がスーッとラクになる本」水島広子
こんにちはー。製造系スタートアップを創業し、あっぷあっぷしながらなんとかやってるゴリです。今日は私の愛読書(?)のご紹介をしたいと思います!ご紹介するのは精神科医の水島広子先生が書いた「『心がボロボロ』がスーッとラクになる本」です。この本には何度も何度もお世話になっています。
仕事でもプライベートでも精神的に辛いときってありますよね。合う合わないはあると思いますが、この本に書かれている内容を知っていると、自分の精神状態を少しでもコントロールできるようになるのではないかと思います。私自身は以前の私よりはかなりマシになったと感じています!
【関連エントリー】
私自身はどうやら考え方にクセがあるようで、何度も同じようなことで悩んでしまいます。ですので本書を読むことで考え方のクセを修正するように心がけています(無意識のうちに何度も何度もクセが出てしまうのですよね。。。)。そうすると本当に心が軽くなります!
|
目次
本書の目次
こちらが本書の目次の詳細になります。本書の目次はきれいに構成されているので、目次が一番よいまとめになっていると思います。これを一通り眺めるだけでも学びがあります。
- 自分の「足りないところ」探し、していませんか?「頑張り」と「頑張りすぎ」は違う
- 何をやってもダメと思ってしまうのはなぜ?
- 「足りないところ」探しは心のクセ
- 今できていないことは、今はできないこと
- 自分の限界にはなかなか気づかないもの
- 心をボロボロにする典型的な感じ方
- 心と体の「取扱説明書」をよく読もう
- ボロボロは自分を守るためのサイン
- 「ポジティブ思考」はやめる
- もう、自分をいじめない
- 「自信が持てない」ことには理由がある 「衝撃」からうまく立ち直る方法
- 自信を失ってしまったとき、どうすればいい?
- 「衝撃」を受けたとき、心に何が起こるか
- 目標は「まあ、何とかなるだろう」
- 自分を責め続けるのも「衝撃」への反応
- 「ダメな自分」が事実をゆがめてしまう
- かたくなになった心を和らげる方法
- 自信とは「自分についてのよい感じ方」のこと
- いつもの毎日をいつも通りに生きる
- 他人の支えも心を楽にしてくれる
- 高すぎる目標は立てない
- 他人からボロボロにされない「心の守り方」 「困っている人」に振り回されないコツ
- 他人の「裏切り」によって傷つけられたら。。。
- 「孤独感」で押しつぶされそうなときの対処法
- ひどい上司に傷つけられない方法
- 「こうあるべき」を通して他人を見ない
- 職場いじめなどで居心地が悪い。。。
- 他人に自分を否定されたとき、どうすればいい?
- それでも問題人物とつきあわなければいけないとき
- 会社にも「限界」がある
- 一人では対処できないことがある
- 「未来への不安」を手放せば、うまくいく 絶望的な状況を乗り越えるヒント
- 就職が決まらない不安をどうとらえるか
- 「未来の奴隷」から解放されよう
- 自分が何を目指せばいいかわからないとき
- 家族に自分の時間を奪われていると感じたら。。。
- 不本意な変化を乗り越えるコツ
- ぐずぐず言うことで、人は前進する
- 感情を話すことで関係が豊かになる
- こうすれば、「本来の自分」を取り戻せる 自分を粗末にしない考え方・生き方
- 「ノー」と言えない自分を何とかしたい。。。
- なぜ自分より相手を優先してしまうのだろう?
- 「評価される対象」から「感じる主体」になろう
- 「報われない」「評価されない」と感じるとき
- 仕事のプレッシャーとの上手なかかわり方
- 「何をするか」ではなく「どうあるか」
- 追いつめられているのは誰のため?
- 「つながり」を大切にする
興味のある章はありましたでしょうか?
きっと読む人によって興味のある章は違うのではないかと思います。私自身は何年もこの本を読み返していますが、その時々で自分の状態が異なるので読み直す章が違います。読書って面白いですね~。
本書のまとめ
本書はどの章も本当にためになることが書いてあるので、こちらのブログで全てをカバーすることができませんが、ここでは私が特に感銘を受けた内容を中心にまとめてみたいと思います。
- 心をボロボロにするエネルギーを作り出すのは自分の頭の中
まずはこのことが考え方の出発点になっているように思います。自分の心をボロボロにするのは、特定の他人だったり環境のせいなのだと私は思っていたのですが、自分の考え方で自分の心がボロボロになっているというのは目から鱗が落ちる思いでした!
起こったできごとをどのようにとらえるか、というのは自分の頭の中で決めているから、ということです。「自分はやれることはやった。よくがんばった。」と考えられるか、「あーーー自分はなんてダメなんだ。」と考えてしまうかで精神状態は随分と変わります。
- 自分の足りないところ探しは自分への虐待
大変なことが起きるたびに自分のどの行動が望ましくない結果を産んだのかと、私自身は自責思考で考えてきましたし、物事がうまく進んでいるときも「もっと改善できる!」と足りないところ探しを懸命にしてきました。その結果仕事の成果は上がっていたと思うのですが、心はいつも疲れていたように思います。これが原因だったのかも知れません。
「自責思考」は改善をはかるために大切な考え方ではありますが、自分への虐待につながらないように意識する必要がありそうです。
足りないところ探しは自分を否定する要素を含むので要注意ですね。自己肯定感を下げてしまう可能性があります。
- 自分をいじめるのではなく癒す
先ほどの足りないところ探しをやめることに繋がりますが、自分で自分を労わってあげることが大切ということが書かれています。
自己否定ではなく、自分を肯定するのは大切ですね。心のボロボロをいやすのは、最終的には自分ですね。自分自身に「よくがんばった」、「できるだけのことはしたよね」、「できなかったことは、今はできないことだから仕方が無いよ」と自分を労わってあげることが大切だと書かれています。その通りですねー。
- 「攻撃的な人」=「困っている人」
攻撃的な人や怒っている人は何かに困っている人。何かが期待通り、予定通りに進まないから困ってしまって結果として攻撃的になっている。浴びせている罵声は「助けて!」という悲鳴にすぎない。自分の問題を自分の問題として引き受けることができなくなってしまっている残念な人、と本書では書かれています。
私自身の経験を振り返ってみると、攻撃的な人は確かに本人としては困った状況になっていたように思います。攻撃的受けると思わずひるんでしまいますが、冷静になってみると攻撃的な本人は困った状況におちいっていて、感情のコントロールを失っているというのは腑におちます。確かにそんな感じがしますね。攻撃的な人は、心に余裕の無い状態だったり、人生に満足できていないように感じられる人が多かったように思います。
- 自分ではコントロールできないものに幸せをゆだねてしまうと運命の奴隷になってしまう。
他人の評価などの自分ではコントロールできないもので自分の価値を判断しない、ということが本書で書かれていました。就職できなかった、失恋した、など衝撃的なことではあるけれど、それによって自分の価値は損なわれないということでした。これもその通りですね。
自分を労わりつつ、自分がコントロールできる範囲に意識を集中させることが大切だ、ということを私は学びました。
さいごに
いかがでしたでしょうか。本書はいろんなケースを想定して書かれていますので、もし興味のある方は是非こちらの本を読んでみることをお薦め致します。
私自身は、自分で自分を癒してあげることや攻撃的な人は困っている人である、というのは自分にとって大きな気づきになりました。私は自分で自分を追い詰めがちですが、意識的に自分を癒してあげるように心がけています。そうすると他人にも優しくなれる気がします。
今日は以上です。ありがとうございましたー。
関連するお薦め本
厚い本なので好みが別れると思いますが、デビット・バーンズさんが書いた「いやな気分よ、さようなら」もとてもお薦めです。知り合いの臨床心理士さんから薦められて読んだところ色んな疑問が解消されました。こちらの本は「なぜ自分はこんなつらい気持ちになるのか」、「なぜ○○さんはこんな対応をし続けるのか」などの疑問にとてもよく答えてくれる本だと思います。
起業家は心を病みやすい⁈
こんにちはー。製造系スタートアップを創業し、あっぷあっぷしながらなんとかやってるゴリリンです。今日は起業家のメンタルヘルスについて書いてみたいと思います。
起業家は自信満々に見えるけど、実は起業家で無い人達と比べると心を病みやすいというデータがある、というお話です。
みなさんは起業家にどんなイメージをお持ちでしょうか?
- 自信にあふれている
- とびぬけた才能がある
- リスクを恐れない
こんなイメージがありませんでしょうか。スティーブ・ジョブズさん、イーロン・マスクさん、孫正義さんなどなど、メディアで目にする大成功した起業家の皆さんは自信にあふれていて、とびぬけた才能があって、リスクを取ってきた人達だというイメージがあります。
一方で自分で実際に起業してみると、自分は全くそんな感じではありません(えへん!)。これで良いのだろうか、、、といつも迷いがあるし、自分にできることはとても限られているし、失敗はやっぱり怖いです。上に書いた起業家のイメージとはみごとに正反対です。自分には向いていないのではないだろうかなんて考えもよぎります。
ただ誰かと会ったり話したりするときは自信にあふれていて、才能があって、リスクを恐れていないように演じているつもりです。駄目さがにじみでちゃっていますが、一応演じています。
自分達を信じてくれている顧客、自分達の将来を信じて投資してくれている投資家、自分を信じて一緒に働いてくれている社員や協力企業、そういった人達を不安にさせたくないから自信も才能もあってリスクがあっても挑戦するように見せようとしています。起業家自身が自分のやっている事に疑問を持っていると思われてしまうと事業が回らなくなってしまうのではないかと恐れているからです。
本来のダメダメな自分をさらけ出せないんですよね。。。
これは自分だけなのかなと思っていましたが、会社を上場させた旧友と話していたら、なんとその友達も同じようなことを言っていました。「メディアなどで見せている姿は見せたいように演出しているだけ。実際には会社が潰れそうなときもあったけどそんなこと社員や周囲の人達に言えない。人に見せられない苦労をしている。」会社を上場までさせて成功している彼も同じような感覚を持っていることを知って、驚いたと同時に「自分だけでは無いんだ」と少しホッとしました。
その後何人かの起業した人達に話をしてみると、その人達も「実はさぁ...」と他人に言えない悩みを持っていることを教えてくれました。やっぱり似た悩みがあるのですね。同時に「孤独だ」と言う人が多くいました。私も起業してから一番辛さを感じるのはこの孤独感です。会社の調子が良ければ人が寄ってきますが、調子が悪いと見るや否や人は去って行ってしまいます。私の場合は、悩みを共有できる人がいないというのが孤独感に繋がっているように思います。ついつい一人で悩みを抱え込んでしまうんですよね。。。
そんな時に「Why Entrepreneurs Need to Talk About Their Mental Health」というForbesの記事を見つけました。
この記事によると起業家のうち72%の人達がメンタルヘルスの問題を抱えているそうです。多いなぁ~~。非起業家の場合は48%がメンタルヘルスの問題を抱えているらしいので、非起業家と比べると起業家は24%も心を病みやすいという結果になります。うわぁーーー多い!.....でもなんか分かる気がする。
この記事が引用しているのはフリーマン教授(カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校)の調査結果で、原文はこちらになります。
Are Entrepreneurs “Touched with Fire”?
Michael A. Freeman, M.D. (University of California San Francisco) et al.
https://michaelafreemanmd.com/Research_files/Are%20Entrepreneurs%20Touched%20with%20Fire-summary.pdf
Forbesの記事の筆者は連続起業家(シリアルアントレプレナー)のようですが、彼も記事中で孤独感の取り扱いが大変だと述べています。日本だけでなくアメリカでも起業家は孤独感と戦っているのですね。環境が違っていても共通しているように思います。
私自身の少ない経験で言うと、起業して何が一番大変かと言ったら「心の健康を保つこと」です。悩みの半分は心の状態を健康に保つことだと感じています。
その時々でそれぞれ仕事の悩みがありますが、それらは一つずつ結論がついていきます。でも心の状態のコントロールだけはずーーーっと変わらずに苦労し続けています。
不確実な環境下で次々と経営判断を下して行動し続けていくのは、確かにワクワクすることではありますが、知らないうちに心理的に大きな負荷がかかります。また孤独感が加わるときつくなります。ですので意識的に心と身体をリフレッシュしないともちません。
実は起業して一番の愛読書は経営の本でも自己啓発書でもなく、メンタルを健康に保つための本だったりします。繰り返し繰り返し読んで心を落ち着かせています(いつかそちらの本をご紹介しようと思います)。
起業された方やこれから起業しようという方は、ぜひとも心の健康にはお気をつけ下さい。他の起業家の人達に悩みを打ち明けるだけでも心は軽くなると思います!
今日は以上です。ありがとうございましたー。
転職した方が世の中のためになる
こんにちはー。製造系スタートアップを創業し、あっぷあっぷしながらなんとかやってるゴリリンです。元同僚から転職の相談を受けたときに私がお話したことと転職後にその元同僚が話していた感想を今日は書いてみようと思います。
今の会社で伸び伸びと仕事ができないなら、転職した方が仕事の成果が上がる。そうすることで世の中全体でみたら成果の総量は増加する、というお話です。
あなたが職場で飼い殺しをされていると感じることがあったときに、今日のお話が参考になったら嬉しいです。
目次
転職は逃げなのか?
相談をしてくれた元同僚はこんな人です。
- 40歳前半
- 日本の大企業勤務
- 元々は研究開発部門で働くエンジニア
- 数年前から新規事業開発を担当
なれない新規事業開発のお仕事も、新しいことを学びつつ前向きに取り組んでいたようですが、なかなか活躍ができない状況が続いて悶々としていたそうです。そんなときにものすごく会社の業績が悪い時期があり、自分の将来について不安を覚え「自分の市場価値ってどれくらいなのだろうか?」とふと思ったそうです。
そこでその元同僚はモノは試し!ということで転職エージェントに登録をして、いくつかの会社の面接を受けてみたそうです。今まで転職なんて考えていなかったのでほんの出来心だったそうです。
気持ちはわかりますねーー。私も自分の市場価値が気になって興味本位で転職エージェントと話してみたら1か月後には転職を決めていましたからね。
その元同僚が転職エージェントに登録して面接を受けてみたらなんと複数社の技術部門からオファーがもらえてしまったんだそうです!しかもその中の一つは「こんな会社で働けたらいいのにな」と思っていたある外資系企業で、本人もびっくりしてしまったと同時に転職を本気で考え始めたようです。
その元同僚の家族も転職に賛成をしていて、あとはいよいよ本人の決断だけという段階で私のところに相談にやってきました。私も転職経験者なので意見を聞いてみたいと思ったようです。
話を聞いていると元同僚本人が転職について気にかかっているところは次のようでした。
- 成果が出ていない今の仕事から逃げているだけではないのか
- また技術部門に戻るのは自分のキャリアとして問題はないのか
- 優秀な人達の中で自分はやっていけるのだろうか
気持ちはわかりますね~。真剣に考えているのがビシバシと伝わってきます。と同時に本心では転職したいと思っていることも伝わってきます。転職したいんだけど、新たな挑戦をしてみたいんだけど、でもやっぱり不安が残っているように私は感じました。
「成果」が出ないのは本人のせいとは限らない
まず1つめの今の仕事から逃げているのだけでは?という疑問に対して。そもそも本気でそのような疑問を感じられる人は逃げるような人ではないと思います。逃げ癖がついている人は本心では逃げていると分かっていながら「これは逃げではない」と思いこむことが多いのではないでしょうか。言い訳の達人はくさるほど見てきましたが、私が知る限りではその元同僚はそのような人ではありませんでした。
そこで『「成果」が出ないのはあなたのせいとは限らない。むしろ他に要因があることがほとんど』というこんな話をしました。
- 「成果」を出すというのはそもそも「何を成果と定義するのか」ということを自分の中で決めておく必要がある。(上司や他部署による定義ではなく自分なりの定義)
- 新規事業開発部門や研究開発部門での「成果」をビジネスで会社を支えるほどの利益を出し続けるなどと設定してしまうと、気の遠くなるような期間や障壁を乗り越えなくてはいけなくなり、ほとんどの人は「成果なし」となってしまう。
- 関わる人や部署が多数に渡るので、一部署の努力だけではどうにもならない問題が多い。複数部署をまたぐ仕事はマネジメントの仕事。
- トップマネジメントが腹を括らなければ新規事業は結局ダメになる。今まで見た中では腹を括れないマネジメントがほとんど(やるやる詐欺が頻発!)。
「何を成果と定義するのか」を上司や会社ではなく自分で決めることを不思議に感じられるかもしれません。上司や会社に評価されたらもちろんうれしいけれど、他人の評価に一喜一憂していると心が疲れてしまうので自分で決めることが大切だと思います。また上司や会社が要求する「成果」は「ビジネスでぼろ儲けしたら!」とまでは行かなくてもそれに近いものになりがちです。期間的にも無理な場合が多いのではないでしょうか。遠すぎるゴールを目指すと心が折れてしまいます。
あと自分が将来転職することを考えると「これが私の成果です!」と自分で自信を持って言えることが大切だと思います。「成果」そのものも大切ですが、その「成果」にいたるまでの試行錯誤や学びこそが自分のキャリアにとって大切では無いでしょうか。また自分が定義した「成果」を達成できたならそれは自信にもなります。
環境が変わるのなら技術に戻るのもあり
元同僚は今配属されている新規事業部門からまた技術部門に戻ることに対して迷いを感じているようでした。せっかく経験の幅を広げようとしていたのにまた技術部門に戻ってしまって良いのだろうかと考えているようでした。
私は転職して環境が変わったり、同じ技術でも応用先が異なったりしてれば、新しい経験が積めるので技術部門に戻るのもありではないかとお話をしました。色んな環境があるんだと実感を持って理解したり、技術の応用先によって求められることがこんなに違うんだと実感することだけでも経験の幅は広がっていると思います。
私自身はこれまでに出会った人達と異なる価値観を持った人達と一緒に仕事をすることも価値があると思います。
社会人経験が長くなるとポテンシャルよりも経験が重視されるようになってくるように感じています。実際に私が人を採用する時も可能な限り経験者を雇いたいと考えています。横で見て知っているのと経験するのとでは業務の進み方に雲泥の差があるように思います。
価値観は人それぞれですが、新しい経験が得られるのは価値だと私は思います!報酬をもらいながら新たな経験が得られる仕事であれば、それはとても素晴らしいことだと思います!
他人と比較せずに自分で自分を評価する
「優秀な人達の中で自分はやっていけるだろうか」という不安はよーーーく分かります。そんな環境で働くことに対してワクワクすると同時に自分が足を引っ張ってしまわないか、周囲の期待に応えられないんじゃないか、プレッシャーで押しつぶされてしまわないか、とか心配してしまいますよね。
「だいたい大丈夫!(超適当)」と言ったら元同僚にうさんくさそうにみられました。。。が、本当にそう思います。
実際にこれまでに自分が不安になったことを振り返っても何とかなってきたことの方が多いのではないのでしょうか。例えば以下は私が実際に感じてきたことです。
「中に入ってみたら思ったほど優秀な人達ばかりでもなかった」
「確かに優秀な人が多かったけど、そのおかげで色々教えてもらえて自分自身がものすごくレベルアップできた」
「完璧な人はいなくて、一面ではものすごく優秀だけど、〇〇は自分の方が得意だと思う」
周囲の人達が優秀でも優秀でなくても、それぞれ良い事と悪い事があるのではないでしょうか。周囲がどうであれ自分にとって良い事が増えるように考え方を変えていく方が大切だと思います。周囲が優秀であれば優秀な人達からたくさん学べるし、自分の得手不得手もはっきり認識できるようになるので、いずれにせよ前進です!
私自身は自分が一番出来が悪い状況の方が好きですね~。できるフリをしなくても良いから楽だし、周りから学べるし良い刺激がもらえちゃうので。手本になる人も見つけられそうですしね。
反対に自分が一番デキる状況は(今までほとんどなかったけど)苦手ですね~。他人に教えるのがあまり得意ではないんですよね。。。(小声)
とにかく新しい環境に入ると周りの人達がものすごく優秀に見えがちですが、自分の能力や経験値を伸ばす良い機会だと思うので楽しんでしまうのが良いと思います!
飼い殺しされた状態になっていないか?
元同僚の話をさらに聞いていると(一緒に仕事をした期間は間近で見ていましたが)、彼が好きな事、得意な事と会社が彼に求める事の間に大きなギャップができてしまっているようでした。
会社の方向性は変わったのに惰性で続いてしまっている研究開発プロジェクトにしばらく配属され続けるという飼い殺し状態が数年続き、いよいよ新規事業開発部門に異動になったものの、慣れない仕事のため活躍ができず悶々として悩んでいる状態のようでした。外から見ると、能力のある人なのに非常にもったいない状況に見受けられました。
実は私自身もその元同僚と同じ会社で働いていたときに、事業化の見込みがないプロジェクトに配属されて「飼い殺し状態」を経験しています。今振り返ってもあれは貴重な人生の時間の無駄遣いでした!
それなのでその元同僚の状況に思わず同情をしてしまい、「今の会社で飼い殺しされているくらいだったら、事情が許すのであれば、必要としてくれる会社に転職した方が良いと思う。その方があなたの才能が発揮されて、それは世の中のためになる。才能がある人は才能を発揮できる場所で活躍する事がトータルで見ると世の中のためになる。」と伝えました。
今の場所で能力を発揮できていないのであれば、世の中にとっては能力の損失が発生しています。でも場所を変えて能力を発揮できるようになれば、世の中にとってそれはプラスになります。もし今の会社で飼い殺し状態になっていると感じている人がいたとしたら、その能力を発揮できる場所に移ってもらいたいと私は思います。世の中がもっと活性化すると思います!
「適材適所」とはよく言われますが、一つの会社内で小さな適材適所を目指さずに、世の中全体での適材適所になったら良いのに~!と思います。
なぜ飼い殺し状態になるのか
脱線してしまいますが、日本の会社でなぜ飼い殺し状態が発生してしまうのか、ということについて考えていることを少し書いてみます。
私の考えている結論を言うと「環境変化に応じて会社の対応も変化をしなくてはいけないけど、従業員を解雇して人を入れ替えることができず、従業員の配置転換で対応をせざるを得ないから」となります。
環境変化への対応を社内の従業員の配置転換で乗り切ろうとするので、業務と従業員の特性との間にミスマッチがどうしても生じます。もしくはプロジェクトを止めることが面倒だし、他にやってもらう業務がないからという理由で先の無いプロジェクトが続いたりします。こうすることで飼い殺し状態になってしまう人達が出てきてしまいます。
従業員も成果が出せず悶々とするし、経営者も競争力が出せず悶々とします。
自分が経営者になってみて実感したことなのですが、日本においては正社員の解雇は本当に難しいです!本当に難しい!経営者の横暴を防ぐという意味では良いと思いますが、会社の方向転換が難しくなる側面もあります。
「日本の会社は変化に対応できていない」とか「欧米企業は変化に対応できている」というような意見をたまに見かけますが、これは雇用制度の違いも関係しているのではないでしょうか。
アメリカ企業に勤めていた時に感じたのは、解雇も制度としてあるし転職してしまう人も多いので、人の入れ替わりが激しいということです。また仕事が人についているケースが多いので、会社の方向性がコロコロと変わりました。「組織としての継続性が乏しい」とも言えますし「迅速に変化できる」とも言えます。一長一短ですね~。
成長している環境に身を置くことは大切
その後その元同僚がどうしたかというと、、、結局転職をしました!
転職後しばらくしてからお話をした時に元同僚が語った印象的だった言葉は「成長している会社って勢いがあって楽しいですね!」でした。転職して良かったと感じているようです。
新しく採用される人も多いし、プロジェクトは前進して行くし、予算はあるし、昇進できるポストもあって、挑戦もできる、とのことで生き生きとしていました。飼い殺し状態だったころの彼とは別人のように輝いて見えました。私もその様子を見てとてもうれしく感じました!
成長している環境に身をおくと、人不足の場合が多いので裁量のある仕事をどんどん任せてもらえるようになります。自分の能力以上の仕事を任される場合もあるので大変ではありますが、「立場が人を育てる」という言葉があるように今まで経験したことのない立場で仕事をすると急速に成長できると私も思います。
いやーーーー良かったです。
最後に
長々と書いてしまいましたがまとめると
仕事で不完全燃焼感を覚えてた同僚が転職をしてハッピーになった
というお話でした。
今日は以上です。最後まで読んで頂きましてありがとうございましたー。
【参考】転職やキャリアに関するお薦め本
元同僚にも薦めましたが、キャリアを見つめなおす際にこの2冊は良い本だと思いますのでご紹介します。就職活動中の方も既に働いている方にもとても参考になると思います。「コンサル万歳!」的な記述は正直言って嫌いですが(コンサルがどうしても好きになれないので、、、すみません)、話の主旨には大賛成です。
私の理解ではこの二つの本は「自分のキャリアは自分で作る」という考えが根底にあります。マーケットバリューを上げていくための考え方が紹介されていて、とても勉強になります。あと20年前に読みたかったなぁ~。
中リスク中リターンなスタートアップの戦略でもいいんじゃない?
こんにちはー。製造系スタートアップを創業し、あっぷあっぷしながらなんとかやってるゴリリンです。しばらく時間があいてしまいましたが、今日は起業について考えていることを書いてみたいと思います。
地味〜な中リスク、中リターンな戦略もありではないだろうか、というお話です。
目次
起業の本に書いてあること
私の会社は新規上場(IPO, Initial Public Offering)を目的とせず、買収されること(M&A, Mergers and Acquisitions)を目標として設立しました。うまくいけばそろそろM&Aが起きる段階なので次の起業ネタを探しつつ、起業の勉強を始めています。
「えええっ?もう起業もしてるしその会社を売却する段階なのに今頃起業の勉強してるの?」という声が聞こえてきそうですね。えぇ、そうです、遅いですとも!!自慢することではありませんが私も遅いと思います!
でも自分でやってみないと本やお話を聞いてもよく理解できないんですよね~。実験をしてみてはじめて教科書に書いてあることが理解できる感じです。もっと効率よくできたらいいのになぁと自分でも思いますが、これが自分なのであきらめています。私の場合はやってみてから勉強をした方が理解度が断然あがります。
ともかく、起業について勉強を始めてみるとわかったことがあります。めちゃくちゃいい情報がきちんと公開されているではありませんか!!こんな素晴らしい情報が世の中に公開されているなんて素敵ですね~~。知らなかったなぁ~。いかに自分の目がふしあななのか再確認してしまいました。
中でもこちらの田所さんの本「起業の科学」は読み物としても素晴らしいと思いました。田所さんの本では「スタートアップ」と「スモールビジネス」を区別されていて、特にスタートアップについて記載がされています。両者の区別については「起業の科学」をご参照頂きたいですが、私の場合は「スタートアップ」と「スモールビジネス」の中間にあたるように思いますが「スタートアップより」だと思います。
自分の会社を振り返りながら読み進めていくと、ページをめくるたびに「自分のスタートアップはやっちゃいけないことをたくさんやっている!」と変な汗が出てきます。もう取り返しがつかないことだらけ...。やばい。
|
田所さんの本に限らずスタートアップに関する本や記事を読むと「スタートアップは新しい市場を作るもの」とか「世界を変えることを目指すべき」ということが繰り返し述べられています。これが私は全くできていないです(汗)!「誰も気づいていない市場をつくる」とか、できたらかっこいいけどなぁ。自分では全然できていません。ページをめくるたびに「うわぁーーーやっちゃった!スタートアップってそんなにくそ真面目にやらなくちゃいけなかったんだー」と社員には聞かれたくない心の声が出てしまいます。
その一方で「うーーーん、そんなケースばかりではないんじゃないかぁ」と違和感をもつ部分もあったりします。それは「アマゾンやテスラほどの大大大成功を必ずしも目指さなくてもいいのではないか」という感覚です。「スタートアップの成功といえばIPO!」というような考えがこれらの本や記事の背景にあるようになんとなく感じます。つまり、スタートアップ自身が大企業に成長するストーリーについて書かれているように思います。
私達の会社は買収されることを創業当初から目標としていますが、この場合は「新しい市場を作る」とか「世界を変える」ことを必ずしも目指さなくて良いのではないかと考えています。前置きが長くなりましたが今日はこのことについて書きたいと思います。
私のスタートアップの場合
私達の会社が創業当初から買収されることを目指す理由は、私達は私達が得意な開発に特化して、開発が終われば製造や販売が得意な会社にバトンタッチしたいと考えているからです。これはシリコンバレーの技術系企業では割と多いパターンで、成功すればそれなりのリターンもあります。
私達の会社の状況を振り返ると次のような特徴があります。
- 大きな既存市場がターゲット(大手企業が活躍する市場)
- 先行する製品があるけれどどれも完璧ではない。
- 特殊技術を必要とするため類似製品を持っている大手のプレーヤーが少ない。
既存市場をターゲットにしているので「新しい市場を作る」ようなものではありません。様々な書籍に書かれているようなスタートアップの教科書的にはダメな例に当たります。しかも大手企業も活躍する市場です。これは田所さんの本でも「ゴリリン、アウト~~」って言われてしまう状態です。
更に私達が開発している製品と類似の製品が既に市場に出ています。だから私達の製品で「世界が変わる」という事もありません。これも田所さんの本で「ゴリリン、アウト~」と言われてしまうと思います。
ただ先行する製品がどれも完璧ではないので、私達の製品を使うことでユーザーにとってはもっともっと便利にはなります。またその製品には特殊技術が要求されるので類似製品を持っている大手のプレーヤーが少ない状態です。
つまり大手企業がひしめく既存市場で需要はあるものの供給が足りていない製品を提供するということを私達の会社ではやっています。
市場もあって、ニーズもあって、買収してくれそうな大企業候補が複数あって、足りないのは技術だけ、という状況で私達がその技術を提供するという構図です(と私は思っています)。足りていない「技術」というパズルのピースを埋めている感じです。これが私達のスタートアップの価値だと考えています。
スタートアップが大企業との競合を避けることは必要だけど、避け方は色々ありえると思います。今回は多くの大企業では持ち合わせていない特殊技術を私達のスタートアップが持っていることが直接の競合を避ける要因になっていると思います。私達にとっては残念ですが、全てを持ち合わせた大企業も実際にはあります(涙)。でも持ち合わせてない大企業が断然多いという状況でした。完全に競合を避けているわけではないけれど、だいたいは避けているというグレーな感じです。
私達のスタートアップの状況を分析するとこんな感じですが、創業当時はこんなこと考えていませんでした(自慢気)!色々試行錯誤しながら仕事をしてきて、最近になって読んだ起業に関する本に書いてあることと自分がやってきたことが違うように感じるので、ブログを通じて言語化してみたらこんな感じになったというものです。後付けです。
中リスク中リターンなスタートアップの戦略
田所さんの本に書いてあるような新しい市場を作ったり、世界を変えるようなことを目指すスタートアップは成功確率が低い反面当たれば大きい「ハイリスク・ハイリターン」な戦略をとっていると言って良いのではないでしょうか。
一方、私達の会社の戦略はもっと中途半端な「中リスク・中リターン」な戦略と言って良いと思います。大企業に買収されることを目標にしたこのような中リスク・中リターンな戦略があっても良いのではないでしょうか。
抽象化があまりうまくはないですが、こんな感じです。
- すでに市場がある
- その市場では買収してくれそうな大企業がしのぎを削っている
- ニーズがあることは知られている
- 先行製品やサービスはすでにある
- ユーザーのニーズが完全には満たされていない
- 足りていないピースを自社が埋められる
このような戦略のスタートアップは爆発的な成長はしないけれど、ベンチャーキャピタルも満足するそこそこのリターンをもたらすことができるように思います。
新しい市場を作ることを目指すよりは、すでに市場がある分リスクは低くなると思います。しかも大企業が活躍する市場であれば市場規模も十分大きく、ゆくゆく自分達を買収してくれそうな大企業候補が存在するということです。またすでにあるニーズに対して取り組むので、ニーズを掘り起こすようなプロジェクトよりもリスクは低くなります。
まさに中リスク・中リターンです。当事者ではない人から見ると華々しくはないし面白みも少ないかもしれないけれど、実際にやる当事者にとっては比較的取り組みやすいのではないでしょうか。
最後に
自分自身で体験したことと本に書いてあることを見比べてみると、自分では気づいていなかった視点や改善点が見つかってとても刺激的です。当たり前だけど、プロジェクトの数だけやり方はありますね~。面白いです!自分にあった情報を取捨選択するという意味でも、実際に自分でやりながら本を参考にするのが良いなぁと感じています。
私達のスタートアップの戦略は中リスク・中リターンなものでしたが、繰り返しですがこれは完全に後付けです。最初に戦略をたてて実行したのではなく、やりながら自分達で状況を分析し、戦略を変えながら、解決方法を探り、実行を繰り返していたらこうなりました。状況は時々刻々と変わるし、自分の行動によっても状況は変わっていくので、状況の分析はほどほどにして行動を起こしていくことは大切だと実感しています。
ハイリスク・ハイリターン、中リスク・中リターン、ローリスク・ローリターンなど色んな戦略があって自分達にあった戦略をとることになりますが、スタートアップはハイリスク・ハイリターンという王道な考えのほかにも、私達のような中リスク・中リターンという地味~な戦略もあります、というお話でした。
今日は以上です。最後まで読んで頂きましてありがとうございましたー。
開発前の特許スクリーニングは超重要
こんにちは。梅の花が咲く季節になりましたね。
ここ最近のできごとになりますが、私達のスタートアップがある企業から企業価値評価を受けています。恥ずかしいような緊張するようなとても変な感覚がします。例えると、身ぐるみはがされてジロジロ下から上までなめまわすように見られている感覚です。変な例えですみません(汗)。でもまさにそんな感じです。社外には絶対出さない情報まで見せなくてはいけないんですよね、少なくとも私達は。そんなところまで見られたら恥ずかしい!という気持ちです。私達は買収されるExitを目的としているので、喜ばないといけない状況ですが、正直言っていい気持ちはしないです...。
今日はその企業価値評価の中で気づいた、というか再確認した、ことを書きたいと思います。それはスタートアップであっても開発前の特許スクリーニングは重要!というお話です。
目次
高く評価された5つのこと
企業価値評価のときに高く評価された(と思われる)点が5つありました。それがこちらです。
- 開発前に特許スクリーニングを実施していたこと
- 他社の特許回避対策を行っていたこと
- 他機関へのライセンス料の支払いが不要なこと
- 出願した全特許が自社単独出願だったこと
- 開発委託先との契約で、開発中に発生したノウハウ、発明が全て自社に帰属することを取り決めていたこと
1. 開発前の特許スクリーニング
これはある製品を開発しようとした際に、まず世の中にある特許がどのようなものであるかを幅広く調査し、懸案となる特許を抽出する作業になります。
やったことがあるエンジニアならよくわかると思いますが、これはかなり大変な作業です。平気で1, 2か月かかってしまいます。この作業は大企業では開発プロジェクトが始まる前に必ず実施されているのではないでしょうか。この特許スクリーニングがあって初めて2の「他社の特許回避対策を行っていたこと」、3の「他社や研究機関へのライセンス料の支払いが不要なこと」が可能になります。製品化を目指した開発では最初に行うことです。
わざわざここに挙げたのには実は理由があります。
スタートアップで働き始めてからお付き合いする会社が変わって、それで初めて気づいたことがあります。それは特許スクリーニングをせずに開発を始めてしまう会社さんが結構あるということです。
そういう会社さんではどうしているかというと、開発を終えてから製品そのものに関する特許を出願して、それが認められれば開発製品には特許侵害はないということで商売を始めるというものです。開発前の特許スクリーニングは時間と労力がかかるものなので、こうすることで手っ取り早く製品ができる、と考えているようです。
さらに驚いたのは、特許侵害調査も特許出願もしない会社さんも見受けられることです。それらの会社さんが自分達だけで閉じてビジネスをされる限りは私達に影響はありませんが、私達がそういう会社さんに開発を委託するとなると後々大問題になります。これは要注意です。
私達が開発の一部を委託する会社さんは中小企業さんが多いのですが、会社の規模が小さいと特許侵害があっても他社から訴えられることはほとんどありません。それは小さい会社が特許侵害していても、特許権利者の受ける被害は微々たるものだし、訴訟で勝っても得られるお金が少ないからです。特に訴える方が大企業だった場合、中小企業を訴えると弱いものいじめに見えてしまうので企業イメージを考えて訴えない大企業も多いようです。
しかしながら私達のように大企業による買収を目標(Exit)にしているスタートアップではその考えはまずいです。なぜなら上で書いたとおり、スタートアップのような小さな会社が特許侵害をしていたとしても他社から訴えられることはまれですが、そのスタートアップがある大企業に買収された途端に状況は変わり、訴えられるリスクが急に大きくなるからです。元はスタートアップが開発した製品であっても大企業相手であれば特許侵害訴訟を起こされてしまいます。だから大企業側もスタートアップを買収する際には特許抵触については念入りに調査することになります。
だから企業価値評価の際には出願した特許のことを根掘り葉掘り調査されます。いやーーーー、まさか公開前の特許の明細書まで見せなきゃいけなくなるなんて思ってもいませんでした。パワーバランス的に買収する側が強いんですよね、抵抗しきれませんでした。あーーー悲しい(涙)。
2. 他社特許の回避対策
特許スクリーニングの結果、だいたいは回避しなくてはいけない懸案特許がいくつか見つかります。回避できるものは回避して開発するし、回避が難しいものはその特許の無効化を考えることになります。特許の無効化とは、その特許の内容がおおやけに知られたものであることを証明することを指します。簡単に言えばその特許の出願前に同じアイデアが公開されていたということを示すことです。
私達の場合はあるアメリカの研究機関の特許が懸案になりました。基本特許に近いもので回避が難しいものでした。その研究機関のリーダーは某大学の教授も兼任していたので、私達はその大学の学生達の卒業論文をくまなく調査しました。そうしたところ特許出願前にある学生が特許と同じ内容の修士論文を発表していて、しかもそれが一般に公開されていることをつきとめました。弁理士さんと相談し、これなら訴訟になっても無効化できそうだ、という結論になりました。いやーーー、学生さんは論文を出さないと卒業できませんからね、特許出願を待たずに論文を公開してしまったのですね。私達にとってはラッキーでしたが、このように特許の無効化を図りました。
弁理士さんから「見解書」という意見書をもらっておいたのも企業価値評価をおこなっている大企業には安心材料になったようです。
この特許回避が事前に図られていることで、大企業はスタートアップを買収しても訴えられるリスクを下げられることができます。訴訟リスクがあるとそのスタートアップの企業価値は低く見積もられます。
3. ライセンス料の支払いが不要
先ほどの特許回避の際に特許の無効化ができなかった場合、その特許を持っている権利者にライセンス料を支払うことになります。これがまた高額なんですよね~。特許回避がきちんとできていればライセンス料の支払いは必要ありません。
回避できない特許の権利者が競合他社だった場合は、おそらく費用を払ってもその特許の使用を許可されない、もしくはビジネスが成り立たないほどのライセンス料を要求されることになります。(クロスライセンスという手段もありますが、スタートアップではとることが難しい戦略です。)
また特許使用以外にも、研究機関から技術提供を受けた際にもライセンス料の支払いが発生します。特に相手がアメリカの研究機関や大学の場合、ライセンス料は高額になります。私達は自分達で開発をしたのでこのようなライセンス料の支払いは発生しませんが、最先端技術を大学などから取り入れて開発しないといけない場合は要注意です。後々の企業価値評価に影響があります。
ライセンス料の支払いが必要な場合もビジネス的に不利になるので企業価値は低くなります。
4. 出願した全特許が自社単独出願
出願した特許の中に他社や他機関との共同出願が含まれると、大企業には要注意ポイントとしてみられます。共同出願が含まれると権利関係が複雑になることと、それに伴うライセンス料支払いの可能性が生じることがその原因です。
共同出願者がいた場合、その特許を使用したりさらに他社に使用を許可したりする場合に毎回共同出願者と協議を行う必要があるのでとても面倒になります。その共同出願者との関係がよければ良いですが、時間が経つと仲が悪くなることも大いにありえます。(お付き合いしだしたときはラブラブでも、数年後に険悪になることもたくさんありますよね!)場合によってはライセンス料の支払いが発生することもありえます。
5. 開発中に発生したノウハウ、発明が全て自社に帰属することを取り決めた契約
これは開発開始前の委託先との協議がなかなか難航するポイントです。開発委託をして、その開発の過程で産まれたアイデアやノウハウ(知的財産といいます)の所有権が私達の会社のものになるというものです。私が逆に開発委託を受ける立場でもこの内容には抵抗しますから、契約締結作業が難航するのもよーーくわかります。
これは大変ですが知的財産は製造系スタートアップの企業価値そのものなので開発開始時点で十分に協議を行って落としどころを探ることが大切です。私達のスタートアップを買収したは良いものの、ノウハウが全て開発委託先にあって、開発委託先のノウハウが使えなければ製品が作れなくなってしまうのは大企業にとってはリスクです。
実際私達のスタートアップの企業価値評価をしている大企業は、この点を高く評価しています。また大企業としてはそのスタートアップの製品そのものもそうですが、大企業内での他領域への技術転用も視野に入れることもあります。なのでその大企業にとって転用可能性のあるアイデアやノウハウは多いほど喜ばれます。つまり企業価値が高く評価されます。
ただ正直言って、開発委託先からノウハウが全て開発元の私達に公開されているかというとそんなことはないと思います。開発委託先の会社内でノウハウとして蓄積されているのではないかと思います。彼らは「私達のここの部分は他の製品に関わることもあるので社外に公開できません」と言い張られると引き下がらざるをえません。なので結果的にノウハウは開発を受けた企業だけに蓄積していることになっているのではないかと思います(疑いすぎでしょうか)。
契約をしてもなかなか実効性が保てないのが現実ですね...。とはいえ契約でノウハウやアイデアが私達のスタートアップに帰属するという取り決めをしてあるのは高評価でした。
最後に
私のスタートアップでは製品を開発しているので、毎日の大半は開発や製造についての業務がほとんどで、ついつい特許対応は後回しになってしまいがちです。でも企業価値評価が実際に始まると特許が企業価値にダイレクトに反映されることを実感します。特許をとっていないときは大企業は話を聞いてくれませんでした。そりゃそうですよね。
開発は成功するのか失敗するのか分からないから、毎回毎回開発開始前に時間と労力をかけて特許スクリーニングをするのは無駄が多いようにも感じるかも知れません。でも開発が成功しても特許スクリーニングが不十分であれば企業価値が大きく下がってしまうことを考えると、やはり開発前の特許スクリーニングは必要だと思います。
私自身は試行錯誤中ですが、開発開始前、開発中盤、開発終盤で特許スクリーニングを上手に配分するのを目指しています。
今日は以上です。ありがとうございましたーー!
【知財実務がわかる本】
こちらの本は情報も新しいしよく書かれています。
|