スタートアップであっぷあっぷブログ

元研究者のスタートアップ経営者がスタートアップでの経験やキャリアについて発信するブログ。雰囲気ゴリラ似。

なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1「開発が遅れると会社が潰れるから」

ベンチャー企業(スタートアップ)の方が製品開発スピードが速い

 

これは非常に良く言われる事ではないでしょうか。一般論は色んな所で議論されているのでここでは日本の大企業、アメリカの大企業、ベンチャー企業で実際に働いた自分自身の経験から感じている事を述べてみようと思います。長くなるので複数回に分けて記載します。なお私の体験は製造業に関するものなので、きっと他の業界では状況が違うと思うのでその点はご了承下さい。

 

ベンチャー企業の方が製品開発速度が速い理由

結論は次の通りです。

  1. 開発が遅れると会社が潰れるから
  2. 小さな失敗が許容されるから
  3. 意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから
  4. 専門性の高い他社に業務を委託するから
  5. 社内ルールや行事が必要最小限だから

 

以上の項目はそれぞれ独立なものというよりは相互に関連しています。1-5の各エントリーのリンクはこちらです。今回は1の「開発が遅れると会社が潰れるから」について書いてみたいと思います。

 

【なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのかシリーズ】 

  1. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 1 - スタートアップであっぷあっぷブログ
  2. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 2 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  3. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 3 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  4. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 4 - スタートアップであっぷあっぷブログ

  5. なぜベンチャー企業の方が製品開発速度が速いのか 5 - スタートアップであっぷあっぷブログ

 

1. 開発が遅れると会社が潰れるから

これは文字通りの意味で、開発遅延が起こると資金が足りなくなって会社が潰れてしまう事を指しています。会社では人件費や家賃など会社の業績の良し悪しに関わらず支払わなくてはいけない支出があります。いわゆる固定費です。開発が遅延すれば売上の無い期間が延びる一方固定費は払い続けなくてはいけないため、創業したばかりの私達のような小さなベンチャー企業には死活問題になります。私の会社の場合、家賃は低く抑えているので、固定費はほぼ人件費になっています。成果を出すためには戦力になってくれる社員の人達の協力が不可欠なため、モチベーション維持のためにも報酬を下げるのは難しく、固定費削減には限界があります。

 

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私の会社ではベンチャーキャピタル(VC)から投資を受けて製品開発を行っていますが、投資額は投資を受けた時点の計画に基づいて設定されています。投資家にばれないようにこっそりとある程度遅延を見込んだ計画を経ててはいても、プロジェクト中のどこで遅延が発生するかが判らない状況なので、少しの遅延でもとても怖く感じてしまいます。私がビビりすぎなのかも知れませんが。そのくらいベンチャー企業経営者にとって遅延はものすごいプレッシャーになっています。会社から出ていく固定費との兼ね合いはありますが、いくらかの追加費用を払うことになったとしても、遅延を回避するために全力を尽くしたくなります

 

もちろんVCからの追加投資などを依頼する事も可能ですが、VCからは追加投資の前に打てる手は全て打つ事を求められます。そうでなければVCとしても通常はお金は出してくれません。なので追加投資を受けるのも結構大変です。。。更に追加投資を受けると持ち株比率が変わってしまうので株主間の調整が必要になります。複数の株主がいる場合はこれも大変な作業になります。またVCは追加投資することにより、一層高い価格でのExitを当然望みます。つまりVCからは企業価値がより高くなる事を期待されます。これは経営者にとってはさらに強いプレッシャーがかかることになります。考えただけで胃が痛くなりますね~~。だから私は追加投資をもらわなくても良いように全力を尽くしています。

 

一昔前に「〇〇億円(高額)も調達しました~!イエーイ!」という感じのベンチャー企業経営者を良く見かけましたが、正直言ってその人達の気が知れません。Exitが大変になるのに...と思ってしまいます。プレッシャーにならないのかなぁ。そういう図太いメンタリティは学びたいです!

 

遅延に話を戻すと、私の会社で実際に起こった遅延はこんな感じです。

  • 業務を委託した会社さんに契約通りの仕事をしてもらえず遅延
  • 業務委託する会社を変更したために開発に手戻りが発生して遅延
  • 業務を依頼した外部コンサルが時間を浪費している事に気づかず遅延
  • 想定外の技術課題が見つかり、その対策のために遅延
  • コロナウイルス蔓延のためアメリカで実施予定だった試験ができず遅延

 

影響が大きかったのは業務委託をした会社さんに契約通りの仕事をしてもらえなかった事とコロナウイルス蔓延のためアメリカで実施予定だった試験ができなかった事でした。

 

大企業からベンチャー企業に移ってカルチャーショックだったのは、契約を守ってもらえない事がまあまあ発生する事です。自分達がベンチャー企業だと会社の信用度が低く、お付き合いしてくれる会社さんも少なくなります。お付き合いしてくれる数少ない会社さんの中には契約を重視しない会社さんがまあまああるんですよね!びっくり。

 

つまり自分達の会社もそうですが、信用度の低い会社さんとお付き合いしながら仕事を進めなくてはいけなくなります。会社の信用度が低いって大変だなぁ...(悲哀)。大企業に勤めていた時は契約を結べば守ってもらえるものだと思っていたんですけどね。世間知らずでした。契約違反だと言って訴訟するという手もあるにはあるけれど、ベンチャー企業なんて訴訟している間に資金が底をついて潰れてしまいますからね。現実は厳しいです。完全に足元を見られてしまっている感じです。悲しい~!!

 

話を戻して、遅延を回復することについてこれから書いてみようと思います。

 

このように生じた遅延を回復するために、業務委託先をすぐに変更し、遅れを取り返すためにそれまでに得た知見を次の業務委託先に全てつぎ込むことを行いました。業務委託先の変更にはかなり迷いがありましたが、他の取締役に「駄目な人はいつまで経っても結局駄目なままですよ」と言われ決断をすることになりました。ほどほどにもめた上に追加費用も必要になったけれど、結果としては遅延を最小限に食い止めることができて良い結果になりました。経営者が判断を誤ると一気に会社が傾くという痛い経験になりました。高い授業料を払いました...。でも不幸中の幸いなことに、追加の費用発生を受け入れて早めに方向転換の決断を下したのが結果として良い方向に転がりました。ラッキーです。

 

またコロナウイルス蔓延は完全に想定外の出来事でした。世の中の誰もが予想できなかったことですよね。

 

とはいえ資金の減少は待ってくれません。2020年の2月頃には「2か月くらいしたら収束するだろう」という甘い見込みを持っていました。ところがあれよあれよという間にパンデミックになってしまい日本から出られる状態では無くなってしまいました

 

元々日本では実施ができないと言われていた試験だったためかなり焦りましたが、日本国内でなんとか試験が実施できないかと模索したところ、めちゃくちゃラッキーな事に日本でも試験ができることになりました!九死に一生を得ました。

 

パンデミックの影響で4か月の遅延が出てしまいましたが、きちんと試験が実施できたのは不幸中の幸いでした。アメリカに渡航できる時期を待つという決断をしていたらもっと遅延は大きくなってプロジェクトは終わっていたと思います。考えただけでゾッとします...。振り返ってみると最悪の事態(アメリカに渡航できない事)を想定し次善の策を求めて行動しまくったのが良かったと思います

 

このように見ると遅延の回復のために早々と次善の策を取る事が肝要だったと思います。

 

これと比較して大企業ではどうだったかという事は後に書きますが、私の経験では大企業では計画を変更することと遅延回復のために追加費用の支払いを決断することが難しいと感じています。

 

また大企業ではプロジェクトが遅延しても会社がすぐに傾く事は無いでしょうし、社員も解雇されることも無いので、計画遅延に対して感じるプレッシャーがベンチャー企業ほどには強くありません。特にコロナウイルス蔓延のような不可抗力的な事態が起きた場合には誰もが「仕方ない」といって遅延を受け入れてしまうのではないでしょうか。そこで働く社員にとっては素晴らしい環境ですが、開発速度という意味では遅くなります

 

次回は2の「小さな失敗が許されるから」について書きたいと思います。

 

=== それぞれのエントリーは以下 ===

 2 小さな失敗が許容されるから

gorilyn.hatenablog.com

 

3 意思決定、認識の共有、社内調整に時間がかからないから

gorilyn.hatenablog.com

 

4 専門性の高い他社に業務を委託するから

gorilyn.hatenablog.com

 

5 社内ルールや行事が必要最小限だから

gorilyn.hatenablog.com

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政府機関の調査が来た

先週、自分の会社に政府機関からの実地調査が入った。特に怪しげな事があったから調査が入ったわけではありません。今度新しく製品を上市する前に、自分の会社の品質管理体制に問題が無いかどうかの確認のための調査です。

 

悪い事していないのにお役人の前ではめちゃくちゃ緊張します。悪い事していないのに交番の前を通る時に緊張するのと同じ感覚です(皆さんは緊張しませんか?)。

 

僕の緊張とは裏腹に、政府機関から来た3名の調査員は皆さんとても親切な方々でした。このコロナウイルス蔓延のさなかにご苦労様です。

 

産まれて間もないスタートアップ企業なので、恐らく調査員の目から見るとまだまだ不十分だったのだと思います。調査という名目ではありましたが、プロからコンサルを受けているような感覚でした。勉強になったな~。目標の立て方とか、教育訓練の仕方とか、文書の残し方とか、データ分析の仕方とか。奥深いな~。

 

僕の会社ではこれまで新製品の開発が主だったせいか、品質保証や品質管理が弱いということに気が付いた。品質保証や品質管理のプロを雇って、体制を強化しないといけなそうだ。

 

会社のフェーズが一歩進んだ証拠かな。嬉しい。

 

会社のフェーズが進む度に社員の人達の業務範囲や働き方が変わってきているが、皆さん良くついてきてくれている。皆さん優秀だなぁと感心しきり。もちろん会社のフェーズの進み方にうまくついてこれていない人もいて、その人にはお願いできる仕事がほぼ無くなってしまっている。どうしよう。。。他のスタートアップの経営者と意見交換をしてみたいな。

見て見ぬふり??

物凄く久しぶりにブログを更新!書く事を習慣化しようと思ったものの全くできず、、、反省。「見て見ぬふり」でブログ更新をさぼってしまいました。

 

今日は私もできていないこんな「見て見ぬふり」について書こうと思います。

 

仕事を社員の方や外部コンサルタントの方にお願いしてきましたが、目標未達や計画遅延を繰り返す人がいます。また同じ人であってもある業務は目標以上の達成度をみせるものの、ある特定の業務に限っては目標未達や計画遅延を繰り返したりしています。

 

相手はプロだからと考えて仕事の進め方はお願いした人達にお任せし、達成度や進捗だけを確認しているとズルズルと目標未達や計画遅延を繰り返す場合が出てきます。その理由を聞くと最もらしい回答が返ってくるので「そうですか、そうですか」と納得して仕事をお任せするのですが、待てど暮らせど一向に改善しません。そうこうしているうちに計画遅延が会社運営にとって危険な領域に差し掛かってきます。私のアクションも遅いのですが、そこで「これはやばい!」と思い立ち目標未達や計画遅延を繰り返している業務に介入します。

 

そうすると多くの場合が次の二つのどちらか、もしくは両方の問題が起こっています。

  • 何をやったら良いのかが判らない
  • 遅延をした方が個人的な利得が大きい

 

 どちらの場合も担当者は目標未達や計画遅延について「見て見ぬふり」をして、目標に向かっているかどうかは無関係に自分のできる事ややりたい事だけをこなし続けている状態になっている事がとても多い。自分のできる事をやるのは当たり前に思うかも知れませんが、自分にできなくても必要な事柄があればだれかに助けを求めないと進んでいけません。自分の得意領域から外れる事や自分自身の対応力を超える場合には助けを求める必要があります。本人も気づかない間にそのアクションが取れていない事が往々にしてあります。

 

「遅延をした方が個人的な利得が大きい」とは例えば成果報酬では無くて時間給で働いている状態の方を指します。なるべく時間をかけた方が報酬額が上がる場合です。もちろん時間給で働く人達のほとんどは意図的に遅延を起こすことはありません。ただ稀に時間給の方で意図的としか思えない遅延を起こす人がいます。特に時間で課金される外部コンサルタントにこのような傾向が見られがちです。目標未達や計画遅延を指摘してもとぼけたり、業務内容をブラックボックス化してなるべく長い時間をかけようとする人もいました。仕事をお願いする立場からすると、時間とお金をかけても一向に成果に繋がらないわけですので非常にストレスが溜まります。この人には成功報酬型にしたいと申し出ましたがかたくなに断られました。結局この人とは信頼関係が持てず仕事をお願いする事は無くなりました。

 

 それで目標未達や計画遅延を繰り返す業務に介入する場合には次のようなステップで介入します。

  1. 目標設定をより短期的な目標に分解する
  2. 目標に定量性を持たせる(目標達成の基準を可能な限り具体的に決める)
  3. 目標達成までの具体的なアクションを決める
  4. 進捗をこまめに確認する
  5. 問題が生じた場合は即座に目標の修正を図る

 

 私の過去の経験では上記の1か2のステップがうまくできておらず、業務が停滞してしまっている場合が多いです。人によっては上記のステップの1だけ、もしくは1と2だけ支援をすると見違えるように業務が進み始めます。また3のアクションの際に専門的な支援が必要な場合は、誰か支援している人の協力を得るようにします。こうすることでだいたいは業務が前進するようになります。

 

こうやって振り返ってみると、私がブログの更新ができていないのは、短期的な目標設定がうまくできていない事に原因がありそうです(汗)。

 

ということで!ブログを毎日や毎週更新するのは難しいので、毎週少なくとも一度はブログの文章を書いてみる、ということにしたいと思います。

 

人のふり見て我がふりなおします!

2019年の振り返り: 取締役の変更

いよいよ2019年も残りわずか。本当にあっという間に2019年が過ぎ去った気がする。でも改めて振り返ってみると2019年初頭の事柄はもう何年も前の出来事のように感じる。進展が大きかった証なのか、トラブルが多かった証なのか、充実していた証なのか、それとも単に記憶力が悪いせいなのか。。。

 

仕事について振り返ってみると「取締役の変更」と「取引先の変更」の二点が最も大きな出来事だと感じている。二つともヒトに関することだなぁ。心を砕くのはヒトとの関係性なのかも知れない。あーーーー胃が痛かった。

 

取締役の変更

 

これは以前にも記載したが大企業出身の方を取締役に迎えたらエライ目にあった出来事。私達の会社にはあまりにもフィットしなかった。他のメンバーを見ながら感じるのは彼が私達の会社にフィットしなかった点は「自分の専門外の領域に出て仕事をすること」と「迅速に決断を下し行動に移すこと」の二点だったのではないかと思う。

 

一つ目の「自分の専門外の領域に出て仕事をすること」についてはベンチャー企業特有の事情が関連している。ベンチャー企業は資金も人員も非常に限られているケースが多い(私達の会社だけかもしれないけど...)。あるプロジェクトを完遂しようとすると様々な専門性が必要になる。しかしながらベンチャー企業では人員に限りがあるため社内に全ての専門性を取りそろえるのはほぼ不可能な状態にある。そのような場合には社外から必要な専門性を調達しなくてはいけないが、社内でもある程度の知識が無ければ仕事の依頼や納品物の評価すらできない状態になる。従って社内の誰かが「自分の専門外の領域」の勉強をある程度はせざるを得ない(多くは走りながら考える状態)。また、社内の資金が不足していればそもそも社外に依頼する事もできず、社内のメンバーが勉強をしながらプロジェクトを進めざるを得ない。

 

先の大企業出身の元取締役の方はこの「自分の専門外の領域」に出る仕事をしたがらない人だった。豊富な社員数、多様な専門性を取りそろえる大企業であれば、この元取締役の方のような姿勢も許容されるのかも知れない。それぞれ専門性の高い人が対応した方が、全体として効率も良い。しかしながら資金も人員も限られた私達の会社のようなベンチャー企業では圧倒的に物足りず、プロジェクトを前進させるには効率が悪いと判断されてしまう。会社のサイズが小さくなると個人の守備範囲は広くなる。

 

二つ目の「迅速に決断を下し行動に移すこと」について。先の大企業出身の元取締役は、とにかく決めたがらない人、責任を取りたくない人だった。取締役がこの態度ではそもそも会社は動かなくなってしまう。「私は決められた業務を黙々とこなすことが大切だと思います」と彼は言っていた。耳を疑う発言だった。プロジェクトのゴールや会社のゴールをまず定め、そのゴールへのアプローチ方法を決め、実際にそれに従って仕事を進めていくことになるが、取締役がゴール設定やアプローチ方法を決めたくないと言っていたら誰も動けない。組織は止まる。従業員的な発想が強すぎたように思う。先の元取締役の方は、大企業では管理職ではあったものの取締役では無かったので、従業員的な考えにはなじみが無かったのかもしれない。

 

もう一つ。会社ではアウトプットの有無にかかわらず固定費(人件費など)は発生する。当然ながら短い時間で多くのアウトプットを出すことが望ましい。プロジェクトが遅延することの意味は、アウトプットが無い状態で固定費だけ発生してしまうことになる。つまり資金力の乏しい企業ではプロジェクト遅延は倒産に直結する大問題になる。なので間違った決断を下して行動してしまうのも、決断しなかったり行動しなかったりで時間を浪費するのは実は大差がない失敗を恐れて決断をしなかったり行動しないのは、ベンチャー企業ではそれは100%の確率で「失敗」になる。「失敗をしたくない」という考えが強すぎる人もベンチャー企業に向かないだろう。私も大企業での勤務経験があるが、私が勤めていた大企業は減点方式だった。自ら提案して、それが失敗すると、それは減点対象だった。提案するのはほぼ加点評価されていなかった気がする。だから自らは何も提案せず、上司の方針に従って黙々と仕事をこなす人が評価が高かったように感じていた。考えてみればこのような環境からベンチャー企業に移るとすぐには対応できないのも無理はないかも知れない。

 

いずれにせよベンチャー企業では、判断が必要なタイミングにおいて判断材料が不足するのは常なので、仮説を立てながら行動に移し続け状況を見ながら修正をし続けるしかない。仮説を立てて、その仮説を修正することは失敗ではない。必要なプロセスだ。そもそも仮説が最初から合っていると考えるのは傲慢だと思う。私は将来の事が全てわかっている、と言っているようなものだ。そんな人はこの世に存在していないと思う。仮説を高速に修正していく方が大切だと思う。

 

話は逸れるが、この仮説を立てて行動を起こし、結果を見つつ仮説を修正していくプロセスは研究のプロセスとそっくりだ。研究でも仮設を立てて、その検証方法を考え仮説の検証を行う、というプロセスの繰り返しになる。ゴールに近づく仮説の作り方や検証の仕方が研究者のセンスのように思う。これとベンチャーでのプロセスは似ている。

 

やめてもらうのも本当に大変だった。。。それはいつかまたの機会に。

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大企業勤めとスタートアップ勤めの働き方の違い

 私の勤めているスタートアップで働いてくれる人を募集していてある知人から「あなたのスタートアップで働くための最低要件は何?」と聞かれて答えたのが以下の項目です。

 

  • 個々人の担当領域がだいぶ広い
    • 裁量と責任の範囲が広くなる(職位が高めになる)
    • 裁量をもって仕事ができるし新しい経験が蓄積できる
    • 一方で未経験の事であってもなりふり構わず次々と仕事をしていかないといけない
  • 仕事環境はまだ整っていない
    • 自分達が仕事しやすい環境を作る事ができる(在宅勤務など)
    • 逆に言うと庶務などの支援業務はほとんどない
  • 時間がタイト
    • 承認プロセスがかなりシンプルなので判断が速く非常にスピーディーに仕事が進められる
    • とにかく行動に移してアウトプットを出し続けることが重要。行動、行動、行動!
    • スピード重視にならざるを得ないため、情報や準備が不足する段階で判断をしなくてはいけない場合が多々ある

 

即戦力を求めているのは間違いないですが、それ以上に働き方の合う合わないが重要だと感じています。

 

大企業に長らく勤めていた人を見ていると「決断することに恐怖感を持ちがち」だと感じます。スタートアップでは情報が不十分な中でも次々に決断をして行動に移していくことが必要になりますが、大企業だと決裁者が何人もいたり上司が決断したりするせいか、自分一人が責任を持って決断をする機会が少ないように思います。決断を下すことに慣れていなくて不安に思うようです。

 

失敗をしたくないばかりに決断を避ける人が見受けられますが、創業直後のスタートアップでその姿勢だと困ると思います。責任を回避したいように見えてしまいます。スタートアップは前進し続けないと潰れてしまいますので、決断をしないのは失敗することと同じことです。実際の失敗からは学びがありますが、決断をしないことからは学びが無い分、やってみて失敗することよりも質が悪いです。

 

その時得られた情報からベストと考えられる決断を行い、もしもそれがうまくいかなくて方向転換が必要になればその時になぜうまくいかなかったかを考えて次に活かすことが大切だと思います。

 

とはいえ決断を下すことって本当に大変なことですよね!私も脳みそがめちゃくちゃ疲れます。でもその積み重ねこそが自分を成長させていると実感しています。No pain, no gain ですね~。 

 

反対に大企業で働く事の特徴はこう言えるのではないでしょうか。もちろん状況によって異なりますのであくまでも傾向としての話です。

  • 特化した領域で専門性を高められる
    • 先達が多く指導も受けられるため専門性を高めやすい
    • 一方で仕事の全体像が掴みにくく、場合によっては部分最適化に陥ってしまう
    • 幅広い経験が比較的得にくい(転職に不利??)
    • 出世するまでに時間がかかる(マネジメント経験を積み始めるのが遅くなる)
  • 自分の役割に集中できる仕事環境が整っている
    • 庶務などの支援業務も充実していて自分の役割に集中しやすい
    • 福利厚生も充実していて働きやすい
  • 比較的時間がゆっくり
    • 速さよりも確実性や精度の高さを求められる場合が多い
    • 一方で新しい事を始めるのが本当に大変!

 

こうやってみると大企業って良いですね~。メリットが多いです。大企業で楽しくやっていける人はそれも才能なので、大企業で働いているのが合っているように思います。

 

私のように新しい事をやりたくて仕方が無い人がスタートアップで働くことになるのかもしれませんね~。

 

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読書感想「部下を持ったら必ず読む『任せ方』の教科書」出口治明

自分で仕事を抱え込んでしまって疲れ切ってしまう癖があるので何とかヒントが欲しくて本書を手にとりました。

 

一番印象に残ったのは「部下の仕事が60点なら合格点を与えなければならない」「出来ている60点ではなく出来ていない40点ばかり気にしているから仕事が任せることができない」という箇所です。あぁ~~~これだ!!と思いました。思い当たるところがありまくり。

 

自分自身の完璧主義的な性格がまた出てしまっていることに気づきました。意識的に完璧主義をやめようと努力しているつもりですが、また出ていたようです。いけない、いけない。

 

部下の仕事が60点であっても部下にあれこれ注文をつけることはしないけど、内心ではその仕事ぶりに満足できていないので、ついつい自分で最後に修正したり、次回からは自分でやってしまったりしているような気がします。心からは満足できていないのが原因ですね。

 

こんな文章もありました。「マネージャーが『60点では満足できないから自分の力で80点以上にする』と考えてはいけない。60点で我慢する度量を持つべき。」

はい、僕の事です。度量が足りないです。お客さんに出すものが60点の出来だと申し訳ないし怖いです。。。「部下に権限と責任を持たせる」ということも書かれていたので、お客さんに出すものの場合はあらかじめ権限と責任を持たせて、それが仮に60点だと思っても最後までやり抜いてもらうということかな。

 

本書を読んで60点で良しとする心構えを持とうと決めました!行うは難しだろうけどまずは努力をしてみます。読んだ価値がありました。

 

部下を持ったら必ず読む 「任せ方」の教科書 「プレーイング・マネージャー」になってはいけない


 

 

向かない仕事は健康を害する

取締役として会社に参加してもらった人が会社を辞めてしまいました(涙)。健康上の理由です。


取締役としての重責が大きな精神的ストレスになり健康を害してしまったそうです。周囲との軋轢を生んでいたので周りも大変だったけど、それでも非常に残念です。

 

その方は長年日本の大企業の技術職をされていて定年退職のタイミングで私の会社に参加してもらった方です。その方にとって会社の経営陣に加わるのはこれが初めてでした。


取締役の役割にも徐々に慣れてもらおうと私は考えていましたが、慣れる前に会社を辞めることになってしまいました。長年の従業員の考え方からなかなか抜け出せずに苦労されたようでした。何十年も続けてきた行動や考え方は一朝一夕では変わらないのは当然といえばそうですね。

 

その方はとにかく責任を持つ事を避けたがる性格的な傾向を持っているように感じられました。

 

具体的には、自分が責任者になることをなんとか回避しようとしていました。とにかく自分では何も決定したくない。それでも責任者になってしまった場合には社外コンサルタントを何人も付け、そのコンサルタントに方向性や計画などすべてを決定してもらいたがる(それでも責任者の責任なんですけどね。。。)。失敗した場合に自分にどんなペナルティーがあるかばかりが気になってしまい、ひたすらネガティブ思考に陥って仕事に手がつかなくなる、などなど。

 

立場が人を作る面は大いにあると私は思いますが、それでもあまりにも性格とかけ離れた立場になってしまうと健康を害してしまうんだという事を再認識しました。無理は禁物ですね。


個人や組織が成長する際は、少なからず初めての事やそれまで不得意だった事に取り組むことになり、必然的にストレスがかかります。私自身はある程度ストレスは必要だと思います(Confort zoneから足を踏み出すとも表現します)。なぜなら自己成長のためのストレスは必要だと思うからです。


一方で今回の件のように許容範囲を超えたストレスは個人や組織を病気にしてしまいます。本当に見切りが難しいなぁと思います。

 

これから伸びなくてはいけないベンチャー企業はストレスの塊になると思います。自身のストレス耐性(強弱だけでなく、ストレスの種類も大切)を知って働く場を選ぶことは大切だなとつくづく感じました。

赤ちゃんと一緒にいると大人としゃべりたくなる

今日はお仕事を休んで一日0歳3ヶ月の赤ちゃんと留守番をしていました。
直前の三連休も赤ちゃんと二人で過ごす時間が長かったので妻の気持ちが少しわかった気がします。いつもありがとう~!

 

一番大変に感じたのは誰とも話さない時間が長いという事です。ミルクを作って、上げて、おむつを替えて、抱っこして、あやして、寝かしつけて(以下永遠にリピート)。
その合間に赤ちゃんを抱っこしながら買い物に行って、洗濯をして、掃除をして、、、。大人と会話をしたくなります!あーーーなんかおしゃべりしたい!でもパパ友もママ友もいないし。。。

 

で思いついたのがブログを書く事!しゃべれないなら書く。子供片手に抱っこしながら書いてます。

 

あ、ぐずりだした。。。という事で今日は終了です!

東洋経済記事「日本は超エリートをGAFAに奪われている」について思う事

日本の「超エリート」人材がGoogleAppleFacebookApple (略してGAFAというらしい) に流れている、日本から流出している、という記事が東洋経済に掲載されていました。

 

toyokeizai.net

 

初めてこのタイトルを見た時は「超エリート」を日本の所有物みたいに言っているように聞こえてなんだか違和感がありました。別に個人が働きたい所で働くのは個人の自由じゃないかと。「超エリート」が働きたいと感じる環境がGAFAにある、GAFAが上手にそういう環境を提供している、ただそれだけの事だと。至って自然な事なのに何を言っているのだろうと感じました。

 

でも考えてみれば日本の税金を投じて教育して育った人材が海外に流出してしまうのは日本にとっては大きな損失ですね。日本人に限らず日本で働いてもらいたい人材はどのような人材なのか、そのような人材はどのような環境を求めているのか、という点をよく考えて行動に移す必要があると思います。本当に危機と感じるなら言うだけでなく、行動に移せばいいのにと思います。

 

僕は日本の大学で理系のPhDをとって、アメリカの大学でポスドクをやり、日本やアメリカで日系企業、米系企業で働きました。僕の狭い経験の中で感じていることを書きたいと思います。

 

僕が働く環境に求めるのは次の三点です。

  • 仕事が挑戦的であること
  • 裁量があること
  • 報酬が魅力的であること

 

日系企業と米系企業とを比べると、「裁量」と「報酬」の二点について大きな差を感じます。米系企業の方が僕が求めるものにあっています。日系企業から米系企業に移ることで裁量も報酬も仕事の挑戦度も大きく上がりました。ただ同時に責任も重大で、結果が出なければ立場を失います。職位が上がれば上がるほど責任をとって去る人が多いです。

 

一方日系企業年功序列傾向が強く、裁量も無ければ報酬も低めです。仕事で誰よりも成果を出したとしても数年単位では何も変わりません。逆に失敗してもお咎めなしです。日系企業は良く言えば家族的、悪く言えば社員を子供扱いしているように思います。僕は色んな事に次々挑戦していきたいタイプなので、米系企業の方が自分に合っています。日系企業に勤めていた時は言いたい事をほとんど言えなかったので(←あまり意見を言わない方が良いという事を徐々に学びました!)息が詰まりそうな感覚をずっと持っていました。「他の同僚」と同質であることが好まれたように思います。PhDであること、アメリカでポスドクをやっていた事は、その企業では珍しい事だったので「自慢している」ととられる事が何度かありました。目立ちさえしなければお互い助け合う良い会社だったので極力目立たないようにするようになりました。

 

機会があって米系企業に移ってからはまた自分の意見を堂々と発言し、実行し、評価してもらえるようになり、自分でも驚くほど息を吹き返したのを覚えています。人間、呼吸は大切ですよね~。呼吸を忘れていました!自分が他の人と違うことがセールスポイントになります。やっぱりこの方が僕には合っていました。個人を大切に生きて行けるのは素晴らしい事だと思います。仕事の挑戦度、裁量、報酬の全てが向上しました。唯一の大変さはプレッシャーのきつさでしょうか。誰でも体調や気力に波があると思いますが、調子が上がらないときは日系企業にいるときよりも大変ですね。

 

長々と書いてしまいましたが、僕の場合は「仕事の挑戦度」「裁量」「報酬」が魅力的であることが大切なので日本企業でそう言うところがあれば働きたいと思います。現時点では日系企業と米系企業を比較したら米系企業の方が働きやすいです。ただ今は自分で会社を興して経営しているので、「挑戦度」と「裁量」は非常に高いので日本であっても満足な働き方ができています!(報酬はこれからかな...)

 

報酬の違いについても思うところがあるので、いつか記載したいと思います。

経営者と従業員の違い

取締役候補の人(以下Bさん)と面談をしていて「経営者」と「従業員」の違いについて感じた事を書こうと思います。Bさんはある日系の大企業の従業員として数十年お勤めだった方です。

 

Bさんから以下のような質問を受けました。

  1. 「私の上司は誰になりますか」
  2. 「私は誰に定期的に報告する事になりますか」
  3. 「(Bさんが遵守する)就業規則はどうなっていますか」
  4. 「どんな資料を作っていたら良いですか」
  5. 「出張はどのようにしていますか」

 

僕の考え方と違うだけかも知れませんが、いずれの質問も従業員目線の質問に感じました。新鮮さを感じてしまうほど忘れていた感覚です。

 

1について「上司はいません」ですし、2についても「株主や顧客などに報告することになります」です。3は「Bさんは経営側なので就業規則は適用されません」で、4と5は「必要性に応じて適宜」という回答になります。

 

確かに従業員として異動や転職すると真っ先に気になることかも知れませんね。日系某企業に勤めていた際には僕も気になっていたと思います。覚えてないですが。資料はたくさん作った気がしますね~。懐かしい。

 

経営者になってから感じるのは、自分自身の判断で仕事を進められるのが良い反面、その判断による結果は良くも悪くもダイレクトに跳ね返ってくることです。うまくいけば嬉しいし、失敗すれば自分の判断ミスが導く損失の大きさを目の当たりにすることになります。やりがいがある反面、プレッシャーも大きく、休暇中も心のどこかで仕事の事がひっかかっています。もっと何事も気にしない性格だったら楽だったのになぁ~。仕事自体は楽しいからいいか。

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